2018年11月3日土曜日

映画「マリ・アントワネットに別れをつげて」を観て」


2012年のフランスとスペイン合作による映画で、フランス革命が勃発して混乱する中で、ヴェルサイユ宮殿の混乱を一人の下女の眼を通して描いています。
ヴェルサイユ宮殿は、ルイ14世によって建造された壮大な宮殿ですが、あまりに壮大すぎて、この時代になるとメンテナンスが行き届かず、雨漏りはするし、運河にボウフラが沸き、蚊が発生し、さらに鼠が走り回っています。主人公のシドニーは孤児の下女で、どういう経緯で宮殿に入ったか分かりませんが、マリー・アントワネットの朗読役で、常に王妃の傍にいて、王妃の気まぐれに応じて朗読する役割でした。彼女は王妃のお気に入りですが、王妃の気まぐれに対応するのは大変でした。それでも彼女は王妃の傍で使えることが幸福であり、もしかするとレスピアン的感情を抱いていたかもしれません。
マリー・アントワネットについては、「映画でフランス革命を観て マリー・アントワネット」(http://sekaisi-syoyou.blogspot.com/2015/11/blog-post_14.html)を参照して下さい。この時のマリー・アントワネットはまだ14歳でしたが、今回の映画ではすでに34歳になっており、3年後に彼女は刑死することになります。彼女は若くて美しいポリニャック夫人に恋をしており、シドニーはポリニャック夫人に嫉妬していました。
そんな中、1789714日にパリでバスティーユ牢獄襲撃事件が起き、また首を切るべき286人の名を記したパンフレットが市中に出回り、ヴェルサイユ宮殿はパニックに陥り、貴族たちは王を捨てて逃げ出し始めました。そんな中で王妃は、民衆の憎悪の対象となっていたポリニャック夫人を国外に逃がそうとします。その際、王妃はシドニーに、ポリニャック夫人の衣装を着て夫人の身代わりになれと命じたのです。言い換えれば敬愛する王妃から、彼女にとってはライバルであるポリニャック夫人の身代わりになれと命じられたのです。彼女はショックを受けますが、彼女には命令を拒否する術はありません。結局彼女は夫人の衣装を着て、夫人が下女の衣装を着て出立し、結局検問を無事にパスして亡命に成功します。そして最後はシドニーの独白で終わります。
「私の名はシドニー・ラボルト。身寄りのない孤児。元王妃の朗読役で、王妃の命令通り、ヴェルサイユから去る。そして誰でもなくなる。」
この映画のストーリーをどのように解釈してよいのか分かりませんが、この映画は従来喧伝された絢爛豪華なヴェルサイユ宮殿の小汚い部分や狭苦しい部分を描いており、私自身は大変興味深く観ることができました。私の世代は「革命」に特別な思い入れがあり、フランス革命を革命の典型として美化してきました。しかし今日ではこのような革命観は跡形もなく崩壊し、さまざまな角度からの研究が行われています。この映画は、革命そのものについて描いているわけではなく、バスティーユ牢獄襲撃事件が起きた1789714日から17日までの4日間のヴェルサイユ宮殿を、一人の下女の眼を通して描いており、それはまさにヴェルサイユ宮殿崩壊の姿だったと思います。そしてこれも革命の一つの局面でした。

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