2017年2月1日水曜日

「アジアの医学」を読んで

ピエール・ユアール、ジャン・ボッシー、ギ・マザール著、1978
赤松明彦、高島淳、荻本芳信訳、せりか書房、1991
 歴史上、あらゆる地域において多くの民間医療が存在し、現在も続けられていますが、インドや中国ように文化的にも歴史的にも伝統のある地域では、ある程度体系化された医療技術が生み出されます。本書は、インドと中国における医療の歴史を扱っており、具体手的な内容については、私には難解すぎますが、両地域の医療の大きな特徴を捉えることはできます。
 インドでは、ヴェーダ期の終わり頃に当たる紀元前800年から700年頃に「アーユル・ヴェーダ」という形で、医療が体系化されたとのことです。「アーユル・ヴェーダ」とは、「長寿についての知」という意味で、単に医学であるだけでなく、あらゆる意味での種々多様な生命現象を取り扱うものです。特にインドでは、外科手術が発達していたそうで、腸の縫合手術までしたそうです。また、「アーユル・ヴェーダ」と並んでシッダの医学というのがあり、化学療法を用いたそうです。その他にヨーガがあり、これは身体と精神の制御を獲得するための一連の技法からなっており、治療法というよりは予防法というべきものです。

 中国の医学は、すぐれて中国的な宇宙観と結びついています。「西洋の習慣とは異なり、中国的なものの見方からすれば、何よりも人間が含みこまれる宇宙というものを述べることなしに、人間の解剖学や生理学を考えるわけにはいかない。というのも、この宇宙は閉じられた世界であり、その部分部分は類似した構造をもち、一つの相関的なシステムによって密接に結び合わされているからである。このようなシステムは、西洋人の眼から見ると誤謬があるように思われるが、美的かつ倫理的な面での魅力は否定し難い。それは因果的推論ではなく、思考のシンプルな短絡である。すなわち、類似した関係は宇宙にあるさまざまな要素の中で定まるのである。それは時間―空間の壮大な概念であり、「太極」によって図説される。この概念はタオ「道」という不動の原理のもつリズムから生まれる。タオは休息()として、あるいは運動()として表わされる。」つまり、この陰と陽の調和が崩壊する時、あらゆる有害な現象が生じる、ということです。


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