2020年1月8日水曜日

「イギリス 繁栄のあとさき」を読んで

川北稔著 2014年 講談社学術文庫
 本書の著者川北氏は、ウォーラーステイン「近代世界システム」の翻訳者で、かつて私も「近代世界システム」を熟読し、このブログの冒頭で紹介した「グローバル・ヒストリー」を書き、それを大学での教材として用いました。ただ、私自身の中では、この教材を書き上げた直後に、「グローバル・ヒストリー」は終わっていました。というよりも、すでに始める前から、このようなシステム論的な歴史の捉え方には疑念を抱いていたのですが、一度は通過せねばならないテーマとして、数年間かけて勉強し、ブログに掲載した「グローバル・ヒストリー」を書き上げたわけです。それ以後、私は私の目の前に現れるさまざまなテーマに触れ、私自身の内部で消化しており、それがこのブログの内容なのです。
 川北氏は、本来近代イギリス史の専門家で、ユニークな著書を多数執筆されており、私もかなりの著書を読みました。今回、久々に川北氏の著書を読むことになったのですが、本書は何度か雑誌に掲載された論文をまとめたもののようで、初版は1995年です。内容的には、私が熟知していることが多いのですが、エッセー風に書かれ、読みやすい本となっており、自由な発想で書かれています。

本書は冒頭で、産業革命は本当にあったのか、という疑問を投げかけています。産業革命は、近代・現代世界のすべての出発点のように考えられていますが、私自身はこうした考えに否定的です。というより私は、いかなる前提条件もなしに、歴史の中に入っていきたいと思うからです。それが不可能だと分かっていても……。

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