2018年2月14日水曜日

「シベリウスの生涯」を読んで

ハンヌ=イラリ・ランピラ著、1984年、稲垣美晴訳、館野泉監修、筑摩書房、1986
ジャン・シベリウスは、フィンランドが生んだ偉大な作曲家です。1865年に生まれ、1957年に92歳で死没するまで、フィンランド音楽を世界の音楽のレベルまで高めていきました。20世紀になるまで、フィンランドは独立国家を形成したことがなく、フィンランド人としてのアイデンティティも文化も存在しませんでした。フィンランドについては、「映画「四月の涙」を観て」(http://sekaisi-syoyou.blogspot.jp/2016/10/blog-post.html)を参照して下さい。それでも19世紀になると、フィンランドの民族叙事詩「カレワラ」が編纂されて民族的自覚が形成され、フィンランド語が普及していきます。こうした時代に、シベリウスは生まれました。
「作曲家ジャン・シベリウスの誕生は、神秘的な謎のようだ。民族の文化がまだ芽生えたばかりの、人口の少ない僻遠の地フィンランド大公国へ、シベリウスは最適の時に生まれ出ずることができたのである。まさに、国の文化が存在感を確認するために、偉大な芸術家たちを必要としていた。民族的自覚に目覚め、民族独自のアイデンティティーや独立への希望を確認する助けとなるような、力強い芸術的シンボルを待ち望んでいたのである。ロシア化時代、シベリウスの音楽は、未来を信じ続けるフィンランドの自由幻想と自由闘争の暗喩となった。
この文章に見られるように、著者はこの上もなくシベリウスを崇敬し、彼の生涯を叙情的に描いています。ただ、予備知識がないと、少し読み辛いかもしれません。


0 件のコメント:

コメントを投稿