2017年9月9日土曜日

映画「アッシャー家の末裔」を観て

1928年にフランスで制作されたサイレント映画で、アメリカの小説家エドガー・アラン・ポー原作の「アッシャー家の崩壊」を映画化したものです。今日から見れば、恐怖場面などは特に珍しいものではありませんが、その後のほとんどの怪奇・ホラー映画は、この映画を手本に制作されたため、当然と言えば当然なのです。この映画は、怪奇・ホラー映画の教科書ともいえる映画だそうです。「アッシャー家の崩壊」についての映画は、その後も多数撮影されていますが、たまたま私が手にしてレンタルしたのが、この映画だったというわけです。
エドガー・アラン・ポーは、1809年にボストンで生まれ、両親が芸人だったことから、各地を転々とします。両親の死後大学に入りますが、すさんだ生活のため中退し、軍隊に入りますが、自由に読書することもできなかったため除隊し、文筆業に専念するようになります。しかし常に生活には困窮しており、1849年に彼が死んだとき、ポケットには9ドルしかなかったそうです。また、彼の死は、彼の怪奇小説同様異常な死に方で、異常な泥酔状態で発見され、意識を取り戻すことなく、数日後に死んだそうです。40歳でした。
ポーは、生前にはアメリカではあまり評価されませんでした。北米のピューリタン的な厳格さが、彼の作風に合わなかったからだとも言われています。しかしヨーロッパでは、ボードレールの「悪の華」やコナン・ドイルの「シャーロック・ホームズ」などはポーの強い影響を受けています。また日本でも、平井太郎がエドガー・アラン・ポーにちなんで江戸川乱歩というペンネームを用いました。
 この映画は、アッシャー家のロドリックが、家の伝統に従って妻の肖像画を描き続けていました。肖像画はまるで生きているように仕上がっていき、それに反比例するように妻は衰弱していきます。やがて絵が完成すると、妻は息を引き取り、棺に入れられて地下室に埋葬されます。しかし、実は妻は生きており、生きたまま埋葬されたのです。そして妻は自力で棺からでて、屋敷にもどるのですが、それとともにあちこちから火が出て、アッシャー家は滅亡します。
 この映画の内容は原作とは多少異なるようですが、その内容は実際にボストンのアッシャー家で起きた事件を題材としているようです。私はもともと怪奇・ホラーものというのは好きではないのですが、彼の生きた時代は西部開拓による希望に満ちた時代のはずであり、彼の作品の暗さがどこから生まれてくるのかよく分かりません。それは、北米のピューリタン的厳格さへの反発なのか、西部というまったく未知の世界への恐怖からうまれてくるのでしょうか。
 しかし、こうした憶測は止めておきましょう。彼の作品は、私にはアメリカ的というよりヨーロッパ的であるように思われ、世界最初の推理小説とされる「モルグ街の殺人」も、舞台は大都会パリでした。つまり彼は、彼が生まれた時代とは直接関係なく生まれた天才だったように思います。彼の怪奇・ホラー・推理の世界は今日まで大きな影響を与え続け、今回私が観た映画のホラーの手法は、現在でも映画やテレビで頻繁に使われる手法です。


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