2017年9月20日水曜日

「戦争はなぜ起きるか」を読んで

AJP・テイラー著、1977年、古藤晃訳、新評論(1984)
 テイラーはイギリスの歴史学者で、第一次世界大戦と第二次世界大戦に関する著書が多く、日本語にも多数翻訳されており、私も過去に彼の著作を何冊か読んだことがあります。本書は、もう少し視野を広げて、19世紀から20世紀にヨーロッパで起きた戦争と、その原因について語ります。また、本書はテレビで放映された講座が基になっていますので、文字より写真の方が多いくらいです。
 著者によれば、フランス革命以降戦争の在り方が大きく変わった、つまりそれまでの支配者間の戦争から国家間の戦争に変わったということです。そしてヨーロッパでは、フランス革命以降大規模な戦争が六度あったと述べます。それはフランス革命戦争、ナポレオン戦争、クリミア戦争、イタリア戦争、ビスマルクの戦争、第一次世界大戦で、七度目の第二次世界大戦は、ヨーロッパだけの戦争ではなく、さらにそれに続く冷戦は実際の戦争には至らなかった、述べます。戦争についてのこうした数え方には異論も多いと思われますが、これはあくまでも著者の考えです。
 個々の戦争の原因について、著者は国際的あるいは国内的要因などについて幅広く述べていますが、結局のところ、誤解や猜疑心や恐怖心が戦争の原因を生み出していること、そして直接の原因は実にくだらないことである、ということのようです。もちろん多くの戦争の原因を、これ程単純に述べることはできないとしても、凝りもせずに戦争を繰り返すこの200年の歴史を見ると、このように考えたくもなります。そして今も世界中に、誤解や猜疑心や恐怖心が満ち溢れています。

 人々はしばしば歴史家に将来どうなるかと問いますが、著者は、過去のことさえ分からないのに、将来のことなど分かるはずがない、と述べるしかありません。


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