2017年4月12日水曜日

「バルバリア海賊盛衰記」を読んで

スタンリー・レーン・プール著(1890)、前嶋信次訳、1981年、リブロポート












 アフリカ北西海岸に住む人々はベルベル人と呼ばれ、ベルベルとは古代ギリシアにおけるバルバロイ(分かりにくい言葉を話す人・野蛮人)に由来し、したがってバーバリーです。このアフリカ北西岸は海岸線が複雑に入り組んでおり、従って天然の良港が多く、古くから貿易港が発展しました。チュニスは、かつてカルタゴが栄えた都市として有名です。そして16世紀から、この地域の海賊の活動が活発になり、彼らはバルバリア海賊と呼ばれました。
 本書は、「3世紀あまりもヨーロッパの通商諸国は海賊どもの御意のままに、貿易を続けることに難渋したり、金もうけを断念させられねばならなかった。」という文章で始まります。この時代の海賊は、単に船を襲うだけではなく、沿岸に上陸し、町や村を掠奪しますので、当時のヨーロッパにとって海賊は脅威でした。特に、オスマン帝国が東地中海を支配するようになると、バルバリア海賊はオスマン帝国の支配を受け入れ、帝国の保護のもとに活動したため、海賊は統制のとれた強大な勢力に発展します。彼らは海賊であると同時に、海軍力の脆弱なオスマン帝国の海軍も担ったわけです。
 本書は、バルバリア海賊をさまざまに角度から述べています。本来、私自身が知らないことばかりですので、難解で読みづらいはずですが、非常に軽快なタッチで面白く記述しており、退屈せずに読み通すことができました。あまりに面白すぎて、信じていいのかどうか分からない所があり、また本書が今から100年以上前に書かれたものであることは、割り引いて考える必要はあります。

 なお、本書が執筆される少し前の1881年にフランスがチュニジアを占領し、かつてのバルバリア海賊の領域は、ほぼフランスの植民地となっていきますが、こうした植民地支配に対して、著者は否定的に記述しています。

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