2015年7月15日水曜日

「西部の町の物語」を読んで

ダグラス・D・マーティン著(1951)、高橋千尋訳、晶文社(1986)

 本書は、1880年代のトゥムストンという町を、この町の新聞社エピタフ社が発行した新聞をもとに再現しています。
















 トゥムストンという町は、現在アリゾナ州にある、人口1500人程度の小さな町です。1877年に一人の山師がここで銀の鉱脈を発見し、その場所をトゥムストン=墓石と名付けました。まもなく多くの山師たちがトゥムストンに殺到し、1880年には500件もの家が立ち並び、さらに1879年には日刊紙「エピタフ」が創刊されます。「エピタフ」とは、ギリシア語で「墓の上に」を意味するそうです。アメリカでは、町が生れればすぐに新聞社が創設されるようで、こうしいたことがアメリカの民主主義の原動力になっているのだと思います。
 この町が最も活気に満ちていた1880年から1882年までの新聞が、今まで発見されていなかったのですが、著者はこの新聞を発見し、この新聞に基づいて主に1881年から83年までのトゥムストンの町の様子を再現します。この時代には、二度の大火とワイアット・アープのOK牧場の決闘などの事件があり、これらの事件が詳しく書かれています。当時の新聞はどれも同じですが、記事には編集者の思い入れが強く反映されており、必ずしも客観的とはいえませんが、それだけに一層面白く読むことができます。
 その後のトゥムストンは、1880年代半ばに銀鉱山が枯渇したためゴーストタウンとなり、現在では人口1500人程度の小さな町ですが、「1870年代から1880年代にかけての辺境の町の町並みが最もよく保存された例」として国の歴史地区に指定され、観光業が主産業だそうです。なお「エピタス」は、月刊誌として今も残っているそうです。

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