2015年5月13日水曜日

「皇帝たちの中国」を読んで

岡田英弘著 1988年 原書房
本書が主張したいことは、「国」とは塀で囲まれた「城郭都市」のことであり、皇帝による「天下」は存在したが、「中国」という「国」は存在しなかった、したがって「皇帝」の歴史こそが中国の歴史である、ということのようです。これでは「民衆」などは歴史に無関係で、民衆からすれば、皇帝は自分たちに迷惑さえかけなければ、「居ても構わない」という程度のものになってしまいます。
また、日本人は日清戦争で中国と戦ったと思い込んでいる人がいるが、実は清朝は中国ではなかった、と述べられていますが、これなどは私には詭弁と思われます。「清朝は中国ではなかった」という最大の理由は、中国にはまだ国民国家が成立しておらず、国民国家以外は国家とはいえない、君主の財産が国家の原型である、ということのようです。「国家とはなにか」ということについては久しく議論されてきたことであり、あまり単純に定義することは困難だと思いますが、われわれはそうしたことを理解した上で、一定の領域と行政組織をもった政治的単位を便宜上、国家と呼んでいるのではないでしょうか。

 ただ、全体の論旨はともかく、個々の内容に関しては、興味深いテーマやエピソードが多く書かれており、文章も歯切れがよく、読みやすく面白い内容でした。

0 件のコメント:

コメントを投稿