2017年11月8日水曜日

「世界の神話がわかる」を読んで

「知の探究シリーズ」、吉田敦彦編、日本文芸社、1997
 世界各地の神話とそのルーツを、6人の研究者が分担して執筆しています。もともと私は神話が好きで、今までにも折に触れて神話に関する本を読んできました。人類が直立歩行し、脳が発達すると、人は様々な問題に対す説明を求めるようになります。太陽はなぜ東から昇り西に沈むのか、人はなぜ死に、死後はどうなるのか。これらの疑問について、当時の人々は、当時知りえたあらゆる知識を総動員して神話を生み出していきます。それは、人間が存立する基盤、社会の規範であり、それなしには人間がいきていけないようなものです。こうした神話を読むと、人間の想像力の豊かさに唖然とさせられます。科学が発達した今日から見れば、神話で説かれていることは幼稚で馬鹿々々しいと思われるかもしれませんが、今日われわれが「科学」と呼ぶものも、宇宙全体から、あるいは人間の歴史全体から見たら取るに足らないほど僅かな知識から全体像を推測しているにすぎません。もしかしたら、何百年か後の人々は、われわれの「科学」を幼稚で馬鹿々々しいものと思うかもしれません。
 「神話が世界観の表明であるということは、哲学の準備であり、また自然界の事物や現象の説明であることは、科学の萌芽でもある。世界観や事象に対する認識を部族の仲間に理解させるためには、言葉と行為による表現が必要であり、自ずとそこには物語が発生する。だから、神話はまた文学の最初の形式でもある。人類の起源を語り、自然界の起源を説明し、守るべき制度や習俗の由来を説明することは、神聖な存在の力が作用して生じてきた部族の物語であって、最初の歴史の形成でもある。また、人類や自然界を超えた彼方に、超越的な力を認識し、その力への服従であることからいえば、原始的な宗教の萌芽である」

 ところで、世界の神話には多くの類似性が見られます。例えばギリシア神話と日本の「古事記」「日本書紀」との類似性が指摘されます。それは偶然なのか、あるいは人間精神が同じような状況に置かれれば、同じような神話を生み出すということか。また、長い年月をかけて伝播したのか。ギリシア神話が生まれてから「古事記」「日本書紀」が編纂されるまで1千年以上の間がありますので、伝播の可能性は十分にあります。もちろん伝播を主張するには、その神話が伝わった経路を証拠をもって実証する必要がありますが、それ自体がワクワクする仕事のように思えます。

0 件のコメント:

コメントを投稿