2016年9月21日水曜日

映画「城」を観て

1997年にドイツ・オーストリアでテレビ用に制作された映画で、カフカの小説を映画化したものです。
カフカは、1883年にチェコで生まれたユダヤ系ドイツ人です。チェコには、チェック人と同時に、多くのドイツ人移住者がおり、その中にユダヤ系も多く含まれていました。彼は日常的にはチェコ語を話していましたが、学校ではドイツ語を習っていました。彼の人生は、表面的には平凡そのものです。富裕な家庭に生まれ、1901年にプラハ大学に入学して法律を学び、卒業後「労働者傷害保険協会」に勤務し、1917年から結核で長期療養生活に入り、1924年に40歳で死亡します。この間に小説を書いていたのですが、生前はそれ程注目されることはありませんでした。
カフカの作品として、「審判」「変身」「失踪者」などが有名で、高度な滑稽さを伴う不条理で非現実的な世界を描いています。彼の作品については、夢と現実の入り混じった描写から、シュルレアリスムや実存主義の先駆と言われたりしていますが、私にはよく分かりません。彼の作品は、読む人によって、民族性の問題、神学的な寓話、現代の象徴など、さまざまな捉え方がされますが、これも私にはよく分かりません。
この映画「城」は、事実上彼の最期の作品で、未完に終わりました。Kという測量技師が、城から測量の仕事を頼まれて村を訪れますが、どうしても城に近づくことができず、また城の関係者と会うこともできません。時代は、電燈や電話があるので、20世紀であろうと思われますが、村は雪に閉ざされた閉鎖的な空間であり、城は特別な存在として人々を縛り付けているように見えます。Kは城の執事の秘書や村長や酒場の女に関わりますが、どれも捉えどころがありません。われわれは、自分の周りの世界を自分を中心に捉えて、自分の世界を造りだして生きていると思うのですが、現実の世界はここに描かれているような、捉えどころのない世界なのかもしれません。

ストーリーには緊張感がなく、気だるくなるような話が淡々と続き、それでいて目を離せません。そして、ある時突然ドラマは終わります。これは未完だからなのか、それともこれで良いのか。このドラマに結末が必要とは思えません。いずれにしても、私にはあまり向かない映画でした。

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