2015年1月28日水曜日

「パナマ地峡秘史」を読む



ディヴィド・ハワード著(1966)、塩野崎宏訳、リブロポート出版(1994) 
著者のディヴィド・ハワードは、もともとイギリスのテレビジョン開発の技師でしたが、第二次大戦中に従軍記者として活躍し、そのご著述業に転向したそうです。著者がどのようしてパナマ運河に関心を抱いたかは分かりませんが、どちらかというと冒険好きな性格だったことから、ただ掘り進むだけの退屈なスエズ運河の歴史より、波乱に満ちたパナマ運河の歴史に関心をもったようです。なお、著者には、その他にも多方面にわたる多くの著書があるそうです。
本書には「夢と残虐の四百年」という副題がついており、ヨーロッパ人が到来してから現代に至るまでのパナマ地峡の歴史を扱っています。古くはコロンブスがアジアへの道を求めて地峡の沿岸部を探索し、1513年にはバルボアが地峡を横断しました。すでにこの段階で、バルボアは地峡に運河を建設する必要性を考えていたそうです。確かに、アメリカ大陸が南北13千キロもあるのに対し、真ん中での幅が65キロしかないことを考えれば、誰でもここに運河を作りたくなるのは当然です。
この地域は、メキシコとペルーとカリブ海を結ぶ要衝であったため、多くの人々がこの地域に関わりました。その過程で先住民は密林の奥に避難し、そこで孤立したまま、ほぼ現在に至るまで存続しているとのことです。そして19世紀末期にパナマ運河の建設が始まります。これを指揮したのが、スエズ運河を建設したレセップスですが、彼は海面式の運河にこだわったため挫折し、破産し、詐欺罪で有罪となります。やがてアメリカが運河会社を買収し、着工するわけですが、本書ではこのあたりの事情が生き生きと描き出されています。
運河の建設は1881年に始まり、一時中断がありましたが、1914年に終了します。その工事は、技術的な問題というより、マラリアと黄熱病との戦いでした。この過程で、この二つの病気の原因の研究と治療法が大いに進展したそうです。そして19148月に開通しますが、その1か月前に第一次世界大戦が始まっていたため、祝賀行事は行われませんでした。
いずれにしても、本書は、全体に大変面白く、面白すぎて本当だろうかと疑ってしまう程です。

 なお、ニカラグアにパナマ運河の規模をはるかに上回る規模の運河建設の計画が進められています。問題は、この計画を香港の企業が請け負ったということです。中国政府は一切関わっていないと主張していますが、それはあり得ないことだと思います。近年、中国の首脳が頻繁に中南米諸国を訪問し、中南米での中国の影響力が増大しつつある中で、もしこの運河が完成したら、アメリカは喉元と裏庭=カリブ海を中国に抑えられることになります。最近オバマ大統領がキューバとの国交回復を実現しようとしていますが、その背景には、もはやキューバと争っている場合ではないという、切迫した事情があるのだと思います。


私の書棚に、中南米に関するまだ読んでいない本が30冊近くあり、それを片っ端から読み、その都度関心を抱いたものを、このブログで紹介しました。これですべてを読み終わり、多分今後中南米に関する本を読むことはないと思います。


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