2016年にアメリカで制作された映画で、アメリカ合衆国第36代大統領リンドン・ベインズ・ジョンソン(Lyndon Baines Johnson)を描いたもので、LBJというのは彼の名の略称です。暗殺された先代のジョン・F・ケネディはJFKと呼ばれていました。一般にこうした略称で呼ばれるのは特別な大統領のみとされますが、ジョンソンは自らそう名乗ったそうです。
ジョンソンは貧しい家庭で育ちますが、政治家を志し、下院議員、上院議員を経て、上院の院内総務に上り詰めます。彼は大統領選挙に立候補する十分な資格がありましたが、民主党内の指名選挙で若いケネディに敗れ、ケネディの副大統領となります。ケネディは高邁な理想を掲げますが、それを実行する手腕に欠けていました。それに対してジョンソンは、長年議会人として生きてきた人物で、議会工作の達人でした。しかし、一般にアメリカでは副大統領というのは「飾り物」で、実質的な仕事はほとんどさせてもらえまず、ジョンソンは不満を募らせていました。こうした中で、1965年にケネディが暗殺され、黒幕がいるのかどうかについて様々な憶測がなされましたが、その黒幕はジョンソンではないかと疑う人さえいました。
アメリカでは、大統領が死亡すると副大統領が昇格して残りの任期を全うします。この昇格の順序は厳密に定められており、先年アメリカのテレビドラマで、議場が爆破されて大統領・閣僚・銀議員の大半が死亡し、たまたま不在だった末端の閣僚が大統領に昇格するという話がありました。この話は極端ですが、アメリカでは大統領が死亡して副大統領が昇格した例は少なくありません。そしてこの時代には、アメリカ大統領は核兵器の発射命令を出せる世界最高の権力者ですから、権力の空白は許されません。ジョンソンは直ちにホワイトハウスへ飛び、その機中で大統領就任の宣誓を行いました。
ジョンソンは、民主党内では保守派だと思われていましたが、大統領に就任すると、巧みな議会工作を通じてケネディ時代の懸案だった法案を次々と通過させます。1年余りの任期を全うした後、「偉大なる国」の建設をスローガンに掲げて大統領選挙に圧勝し、社会福祉やマイノリティの保護など、革新的な政策を次々と実現していきます。しかし、ケネディ以来のベトナム介入に深入りして財政難に陥り、反戦デモが激しくなる中で、ジョンソンは民主党内での支持を得られず、次期大統領選挙への立候補を断念しました。
私は、ジョンソン大統領についてよく知りません。ケネディの明るいイメージに対してジョンソンには暗いイメージがつきまといます。それはベトナム戦争への介入によるものと思われますが、ベトナムへの介入はケネディ時代に始まったものであり、その意味ではジョンソンはケネディの遺志を継いだと言えるでしょう。