1986年にアメリカで制作された映画で、アメリカ人のフォト・ジャーナリストのリチャード・ボイルが、エルサルバドル内戦を取材した際の自らの実体験を描いた小説を映画化したものです。
中央アメリカの歴史と社会は、どの国も似たような経過をたどります。構造的には、一握りの地主による寡頭支配とその利益を守るための独裁政権の存在、それに対する勢力との内戦が繰り返されます。20世紀になるとアメリカ資本が本格的に進出して、多くの国がその温暖の気候に適したフルーツを生産し、ますますアメリカ資本への従属が強まっていきます。こうした中にあっても、各国の内部で改革を行おうとする動きもありましたが、ことごとくアメリカの介入によって潰されてきました。今日多くの国では失業者の増大と貧富の差の拡大、犯罪者の跋扈による無秩序状態が蔓延しています。ホンジュラスから多くの難民がアメリカに向かうという事件がありましたが、それはこうした情勢を背景としています。そしてエルサルバドルも似たような状態にあります。
「サルバドル」とは「救世主」を意味し、それに定冠詞「エル」がついて「エルサルバドル」となります。また首都は、聖なる救世主という意味で「サンサルバドル」となりました。かつてスペインがアメリカ大陸を征服した時、キリスト教に関連する地名をつけることが多く、例えばかつてスペイン領だったカリフォルニアのサンフランシスコやロスアンジェルスなどがよく知られています。
第二次世界大戦後のエルサルバドルは比較的安定していましたが、1979年に隣国のニカラグアで革命政権が樹立されると、その影響を受けてエルサルバドルでも革命評議会による暫定政権が成立しました。これに対して極右勢力によるテロ活動が激化し、1980年にはサンサルバドル大司教が殺害され、これに対して左翼ゲリラが抵抗運動を起こします。これが、1992年まで続くエルサルバドル内戦で、この内戦で75000人を超える犠牲者が出たとされます。この間、1980年にアメリカ大統領に当選したレーガンは、中米の共産化を阻止するために「エルサルバドル死守」を掲げ、本格的に介入を始めたため、内戦は泥沼化していきました。
こうした中で、1980年、アメリカのフォト・ジャーナリストのリチャード・ボイルがエルサルバドルにやって来ます。彼はベトナム戦争でも取材し、すぐれたジャーナリストとして認められていましたが、日常生活は滅茶苦茶で、奥さんには逃げられ、借金に追われ、恋人のいるエルサルバドルに行くことにしました。まさにその時エルサルバドル内戦が勃発し、彼のジャーナリストとしての本能が目覚めます。彼は、どうやら理性より本能で行動するタイプで、いかなる危険も顧みず現場で写真をとり、また一方でその時その時の恋人を真剣に愛します。
映画はテンポがはやすぎて中々ついていけませんでしたが、されでも面白く観ることが出来ました。中米については長い間勉強していなかったので、勉強するよい機会となりました。最近の中米さらに南米も、内部で何かが崩壊しかかっているように思えてなりません。
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