2019年9月25日水曜日

縄文人を読んで















「縄文人に学ぶ」 上田篤著、2013年、新潮新書
「縄文人からの伝言」 岡村道雄著、2014年、集英社新書
 「縄文人」をこよなく愛する二人の著書を読みました。上田氏は建築家で,大阪万博での設計の際に、岡本太郎の太陽の塔と縄文に出会い、それ以来、縄文人にこだわりつづけているのだそうです。岡村氏は考古学者で縄文時代の研究者であると同時に、縄文人を理想とし、自らの名刺の肩書は「縄文人」となっているそうです。
 縄文人は、16千年ほど前から3千年ほど前まで、日本で独自の文化を育んできた人々です。弥生時代から今日まで3千年ほどしか経っていないのに対し、縄文人は1万数千年も活動し続けました。ところが、ヨーロッパの考古学の影響で、農耕の始まりと新石器の使用が結びつけられ、文明は農耕の始まりとともに始まるという固定概念が形成されていました。そして、縄文人は新石器を使用していたにもかかわらず、農耕を行っていなかったため、文明以前の野蛮な人々として切り捨てられてきました。本書の著者はそのことが悔しく、なんとか縄文人を復権させたいと願っています。
 ところで、縄文人はとどこから来てどこへ行ったのか。今日では、DNA鑑定により様々な可能性が示唆されています。しかし多分二人の著者にとっては、DNA鑑定などはどうでもよく、むしろ今日のわれわれの日常生活にいかに縄文人の影響が強く残っているかを強調します。つまり血統を示すDNAではなく、文化のDNAです。両書とも、われわれの日本人の日常生活や思考方式に観られる縄文人の痕跡を具体例をあげて述べます。私には、それが正しいかどうか検証する手段をもたないため、時々こじつけではないかと思う部分もありましたが、このさい面白ければどうでもよいことです。




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