2019年9月28日土曜日

映画「くるみ割り人形」を観て


2009年にイギリスとハンガリーによる合作映画で、19世紀初頭のドイツの幻想文学の奇才E.T.A.ホフマンの童話作品「くるみ割り人形とねずみの王様」を原案とし、チャイコフスキーの「くるみ割り人形」を加味し、さらに時代を1920~30年代のウィーンに設定し、いくぶん政治的色彩を加味しています。本来「くるみ割り人形」はクリスマスの時に演じられる定番ですので、子供向きの映画としては少し複雑すぎたのか、興行的には失敗作でした。でも、私には、大変興味深い映画でした。














 「くるみ割り」とは、くるみの固い殻を割るために梃の力を用いた道具ですが、19世紀の初頭にドイツでこの道具が人形と結びついて、民芸品として販売されるようになりました。これがホフマンの小説やチャイコフスキーの音楽を通じて広く知られるようになったわけです。物語は、少女がクリスマスのプレゼントにもらったくるみ割り人形に従って、夢の世界に入っていく、というもので、夢の世界ではねずみの王が人間を支配し、夢の国の王子がくるみ割り人形に替えてしまう、というものです。
 映画では、くるみ割り人形をプレゼントした少女の叔父アルベルトが、どうもアインシュタインらしく(写真の右端)、現実の世界も夢の世界のようなもの、夢の世界も現実の世界のようなもの、すべては相対性だ、などと訳な分からない相対性理論をぶち上げて、少女を夢の世界に送り込みます。またフロイトの夢判断の話が出てきますが、確かにこの時代のウィーンにはフロイトが住んでいました。さらに鼠の軍隊が人間を征服していきますが、この軍隊はさながらナチスのようでした。同じ時代にチェコスロヴァキアの作家チャペックが「山椒魚戦争」で、知能をもった山椒魚が人間を征服するという物語を書きますが、この映画を観ていて、この「山椒魚戦争」のおぞましさを思い出しました。






 以上のごとく、この映画は子供が観るには無理があるような気がしましたが、私にとっては大変面白い映画でした。なお、2018年にディズニーにより「くるみ割り人形 秘密の王国」が公開されましたが、私はこの映画を観ていません。











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