2018年2月28日水曜日

「中国史の目撃者 毛沢東から鄧小平まで

ジョン・ロドリック著 1993年 山田耕介訳 TBSブリタニカ 1994
著者はアメリカのジャーナリストで、1941年にイギリスのチャーチルとアメリカのF.ローズヴェルトとの大西洋会談に立ち会いましたが、当時彼はまだ駆け出しでした。その後、アメリカのCIAの前身である戦略事務局(OSS)でスパイの訓練を受け、中国に派遣されました。このOSSについては、このブログ「映画でアメリカを観る(7) グッドシェパード」(http://sekaisi-syoyou.blogspot.jp/2015/02/7.html)を参照して下さい。第二次世界大戦が終わると、著者はジャーナリストに戻り、そのまま中国に残って取材を続けます。
 中国では、以前から多くの欧米人が取材し、多くの名著が書き残されており、ここでも何冊かを紹介しました。
モリソン「「ゴッドと上帝」を読んで」
ジョンストン「「紫禁城の黄昏」を読んで」
エドガー・スノー「中国の赤い星」
スメドレー「「偉大なる道 上下」を読んで」
パール・バック映画「大地」を観て」
ニム・ウェールズ「中国に賭けた青春」を読んで
 これらはすべて戦前に取材されたものですが、本書は戦後の1945年からの取材によるものです。当時、重慶に拠点があった蒋介石、延安を拠点にする毛沢東が、将来の中国について話し合っていました。著者は延安で、毛沢東、周恩来、朱徳などと親しく交わります。本書は毛沢東について、次のように述べています。「古い中国のロマンスと冒険譚に胸躍らせた農民の子、土臭い大読書家。教師あがりの実践的革命家、朱徳と並ぶ紅軍創設者。古典派詩人にして京劇愛好家。革命の方向と手段をめぐる説教本シリーズの作家。取り巻きに親友らしい親友を持たない孤独な男。権力に餓え、猜疑心強く、お世辞を鋭く嗅ぎ分けながら、抗し切れなかった男。それが毛だった。」こうした評価が正しいかどうかは分かりませんが、この時代には、個性と能力に溢れた人々が、能力の限りをつくして闘った時代、まさに英雄たちの時代だったと思います。中国の何千年もの歴史の過程で、王朝が交替する度に、同じ様なドラマが繰り返されてきたのだろうと思います。
 その後中米関係が悪化すると、アメリカのジャーナリストは中国から追放され、そのため著者は、日本に住んで中国ウォッチャーを続けました。エドガー・スノーやスメドレーの作品は革命の真っただ中で書かれましたので、大変迫力があります。それに対して本書は文化大革命も天安門事件も目撃した上で書かれていますので客観性があり、今日の視線で中国革命を見直すことができます。

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