2018年2月24日土曜日

映画「シビル・ガン 楽園をください」を観て

1999年にアメリカで制作された映画で、ミズーリ州での南北戦争を扱っています。私が知らないだけかもしれませんが、アメリカ独立戦争や南北戦争を扱った映画は少なく、南北戦争に関しては、このブログでは 「映画でアメリカ史を観る(3)(http://sekaisi-syoyou.blogspot.jp/2015/01/3.html)「風と共に去りぬ」「グローリー」「ロード・トゥ・ヘブン」「ダンス・ウィズ・ウルブズ」について書いていますが、この内南北戦争そのものを扱っているのは「グローリー」だけです。この映画はミズーリ州の南北戦争という、日本人には非常に珍しいテーマを扱っていますが、ただ、邦題の「シビル・ガン 楽園をください」は全然意味が分かりません。原題は「Ride with the Devil」です。
ミズーリ州の南北戦争については、「映画でアメリカを観る(4)  ジェシー・ジェームズの暗殺」(http://sekaisi-syoyou.blogspot.jp/2015/02/blog-post_7.html)を参照して下さい。ミズーリ州は、奴隷州ではありましたが、一人の農場主が所有する奴隷は5人以下という場合が多く、奴隷制が経済の根幹を形成していた分けではありませんでしたので、南北戦争に際して、北軍につくか南軍につくかで意見が分かれ、結局州としては北軍を支持しすることになりました。それに対して、南軍を支持する人たちはゲリラとなって北軍と戦いますが、その中にジェシー・ジェームズもいました。彼は、186416歳の時に兄とともにゲリラに参加し、戦争が終わった後にも、彼は兄とともに銀行強盗、列車強盗を繰り返し、民衆の間では憎い北部を苦しめる義賊として、大変人気がありました。
話が逸れましたが、南北戦争ではそれぞれの側が大義を掲げ、お互いに見知らぬ兵士同士が戦場で激突しましたが、ミズーリ州での戦いは憎しみと復讐によるものでした。隣同士、顔見知り同士が殺しあったのです。ドイツ系移民のジェイクは、親友のジャックの父親が北軍に殺され、復讐のため南部側ゲリラに参加します。多くの人々が、さまざまな動機から北軍への憎しみと復讐心を抱いて、ゲリラに参加して戦います。相手は軍隊だけでなく、民間人も殺害され、憎しみと報復の連鎖が拡大していきます。そうした中で、人々はローレンスの虐殺へと向かっていきます。
ローレンスは、ミズーリ州の西隣にあるカンザス州の町です。カンザス州は、南北戦争が始まる前から、奴隷州になるか自由州になるかで激しく対立してきた町です。そうした中で、ローレンスには奴隷制反対論者が集まり、カンザス州や隣のミズーリ州のプランテーションを襲ったりしていたため、南軍派の憎しみの対象となっていました。そしてこの憎しみを増幅させる事件が起きました。北軍は、南軍ゲリラを援助し便宜を図った者なら誰でも逮捕することを命じており、このことは主にゲリラの親戚である女性や少女を対象にしていましたが、彼女たちが収容されていた女子刑務所が老朽化していたため、建物が崩壊して何人かの少女が死亡したのです。これをきっかけにゲリラたちが集結し、ローレンスを襲って復讐することを決定します。
ゲリラたちは24時間一睡もせず馬でローレンスに向かい、そのまま一斉にローレンスに雪崩込みました。まさに彼らは「悪魔とともに馬に乗り」、虐殺、放火、略奪を繰り返します。戦いが終わった後、ジェイクのように個人的な憎しみからゲリラに参加した人々は、その結果の凄まじさに唖然とし、新しい人生を求めて去っていきます。また一方で、殺人と略奪に魅せられて、無法の道に転落していく人々もいました。ジェシー・ジェームズのような人です。
南北戦争は、教科書的には奴隷制を支持する南部=悪と、奴隷解放を支持する北部=善との戦いとして捉えられますが、戦争の現場ではそれ程単純ではありませんでした。特にカンザス州やミズーリ州のような中間的な地域では、問題は一層複雑でした。この映画は、南北戦争のこうした複雑な様相を描いており、大変興味深い内容でした。


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