2020年7月13日月曜日

映画「クンドゥン」を観て

1997年にアメリカで制作された映画で、チベットのダライ・ラマ14世の半生を描いています。チベットは、ヒマラヤ山脈の北に広がる、平均標高4千メートルの高原地帯にあり、古くからインドとの関係が深く、高度な仏教文化を築きあげていました。チベットの歴史やチベット仏教については、このブログの「ココシリ」を観て(https://sekaisi-syoyou.blogspot.com/2014/01/blog-post_6195.html)、映画「風の馬」を観て(https://sekaisi-syoyou.blogspot.com/2018/04/blog-post_21.html)を参照して下さい。なお、クンドゥンとは、「殿下」というような意味で、日本では法王と訳されることが多いようです。
 チベット仏教では、最高指導者ダライ・ラマは弥勒菩薩の化身とされますので、現ダライ・ラマが死亡すれば、その魂は別の人に転生します。そのため、チベット仏教の高僧たちは、転生したダライ・ラマを探し出すことなります。1933年にダライ・ラマ13世が死ぬと、転生したダライ・ラマを発見するための捜索隊が派遣され、農村で9番目の子として生まれた3歳の子が、1939年にダライ・ラマと認定されます。先代が逝去してから、6年も経っています。私たちから見れば、一体どうゆう根拠で「発見」されるのかと疑ってしまいますが、映画では、この「発見」の手続きと過程をかなり詳しく再現しており、我々には理解できないにしても、決していい加減に「発見」しているわけではありません。
 少年時代のダライ・ラマ14世は、子供らしい遊びをしつつも、勉学と修行に励み、聡明な青年に育っていきます。ただ、イギリスがインドからチベットへの進出を狙っていてたため、チベットに対する中国の圧力が強まり、1949年に中華人民共和国が成立すると、人民解放軍がチベットに侵攻しました。その後チベット政府とダライラマとの長い交渉が続きますが、1959年のチベット暴動の勃発を契機に、ダライ・ラマ14世は中国と国境問題で対立するインドに亡命し、ここに亡命政権を樹立し、今日に及んでいます。当時のダライ・ラマ14世は25歳、現在は85歳です。

 映画は、こうした事件を史実に基づいて、またダライ・ラマの心の動きも含めて描いていますので、大変興味深い内容となっています。残念ながらチベットでの撮影は許可されなかったので、地形のよく似たモロッコで撮影したそうですが、セットによってチベットの建造物などが復元され、さらにチベットのさまざまな風習や宗教儀式などが再現されていますので、大変興味深く観ることができました。

 インド亡命後のダライ・ラマ14世の活動は多岐にわたり、様々な政治的背景もあって彼についての評価は大きく分かれており、私には客観的な評価は不可能です。ただ、ダライ・ラマ14世は、今も多くのチベット人の心のよりどころとなっているようです。








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