2013年にインドで制作された映画で、1960年ローマ・オリンピックでの陸上インド代表選手ミルカ・シンの半生を描いており、内容は彼の自伝『The
Race of My Life』に基づいています。久しぶりにインド映画を観ましたが、相変わらず「お約束」のダンスも歌もたっぷりの映画です。
1960年ローマ・オリンピックの400m走の競技で、ミルカの優勝は確実だとされていましたが、ゴール直前になぜか後ろを振り向き、4位になってしまいます。彼は、インド国民から英雄として称賛され、彼の優勝が期待されていましたので、国民から裏切り者と非難されました。一体なぜ、彼はゴール直前で振り返ったのか。これがこの映画のテーマです。
ミルカは、インダス川上流のパンジャーブ地方出身のシク教徒ですが、1947年のインド独立の際、パキスタンがイスラーム教の国としてインドから分離独立し、パンジャーブはインドとパキスタンに分断されることになりました。ミルカが育った村は、パキスタン側にあったため、シク教徒はイスラーム教徒による虐殺を恐れて東へ逃れました。このことは、パンジャーブの東側に住むイスラーム教徒にとっても同じことで、虐殺を恐れて多くの人々が西へ逃れました。要するに、パンジャーブの分断によって、大量の人々が東西に移動したわけです。
この過程で、ミルカの両親は死にます。そして父は、ミルカに「走れ、ミルカ、走れ」と叫びつつ死んでいきました。これが、この映画の原題です。そしてオリンピック競技のゴールの直前で、ミルカの脳裏にこの時の光景がよみがえり、ミルカは思わず振り返ってしまったのです。映画は、ここからミルカの半生を振り返るという形で描かれます。映画の内容全体は、テーマの深刻さの割には愉快な内容となっていますが、156分という長さには少しうんざりします。
なお、インドとパキスタンは今も激しく対立しており、国境での小競り合いも頻発しています。そして何よりも、両国とも核兵器を保有しているため、小競り合いが核戦争に発展しかねません。この地域は、今日世界で最も核戦争が起きる可能性の高い地域の一つと言えるでしょう。
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