大下武著 2016年 ゆいぼおと
本書は、元禄時代に生きた朝日文左衛門(重章)の日記をもとに、当時の名古屋や時世について、エッセイ風に描いています。江戸時代に武士が書き残した日記については、その外にも多数知られ、映画になったものもありますが、私が本書を選んだのは、尾張藩の武士が書いたからです。なお、名古屋については、「「名古屋を古地図で歩く本」を読んで」(https://sekaisi-syoyou.blogspot.com/2019/03/blog-post_27.html)を参照して下さい。
テレビで「鬼平犯科帳」を観ていると、私でも知っている地名がよく出ており、最近では江戸時代の大坂を舞台としたドラマもまれにあるようですが、名古屋を舞台としたドラマは観たことがありません。元禄時代に江戸は人口100万に達し、大坂も40万でしたが、名古屋もすでに人口10万人を抱える巨大都市でしたので、名古屋を舞台とするドラマなどがもっとあってもよいように思うのですが、なかなか見つかりません。かつて石原裕次郎が「白い町 名古屋」というような歌をうたったため、名古屋はコンクリートの塊というイメージが定着してしまいました。
朝日家の家禄は100石で、その知行地の一部が烏森ありましたが、烏森は私が高校時代に通った場所です。彼の妻は瀬戸の郷士の娘だそうですが、瀬戸は私の町の隣町です。朝日文左衛門は元禄4年(旧暦、1691年)年頃から日記を書き始め、享保2年(旧暦、1718年)に絶筆となり、その年に死亡します。この間、彼は37冊に及ぶ日記を描き残し、中級武士の日々の生活や、当時起こった出来事などを描き残しています。「鸚鵡籠中記」というタイトルは、籠の中にいる鸚鵡(オウム)のように口真似をしているつもりで、日常見聞きした事柄を書き綴った日記、というような意味でないかとされています。その点で、世界史というフィールドで脈絡もなく逍遥する私のブログに似ています。
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