2020年1月1日水曜日

「渡来の古代史」を読んで

上田正明著 平成25年 角川選書
 「帰化人」とか「渡来人」という言葉を、私は大した区別もせず、何となく使用していましたが、この言葉には長い論争の歴史がありました。帰化とは、本来中華思想にもとづくもので、文明の低い地域の人が中華の文明に帰順し、その国の法と秩序を受けている人だそうです。だとするなら、当時日本よりはるかに高い文明をもつ中国や朝鮮の人々が移り住むことを「帰化」と呼ぶことはできないし、第一当時の日本には帰化できるような国家も法秩序も存在しませんでした。「帰化」という言葉をさかんに使ったのは「日本書紀」だそうで、日本第一主義というイデオロギーを掲げようとしていたようです。
 第二次世界大戦後、戦前の皇国史観への反省もあって、本書の著者などを中心に「帰化人」という表現を避けるようになりました。こうした意見について、日本を貶めるものとの批判もありましたが、こうした批判は逆に日本を貶めているように思います。先進的な文明を積極的に受け入れつつ、独自の文明を生み出していった日本の古代の人々を讃えるべきだと思います。当時最先端の中国の文明でさえ、何千年もかけて様々な文明を融合して形成されていったものなのです。
 本書を含め最近では「渡来人」という表現が用いられており、本書では渡来人が日本の古代国家の形成にいかに大きな役割を果たしたかを述べています。私は知りませんでしたが、本書の著者は渡来人についての研究の第一人者だそうです。

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