2019年5月15日水曜日

中国映画「オペレーション・メコン」を観て


2016 中国=香港により制作された映画で、2011年にメコン川で起きた中国船・タイ船の襲撃事件の顛末を描いています。













「メコン川はチベット高原に源流を発し、中国の雲南省を通り、ミャンマー・ラオス国境、タイ・ラオス国境、カンボジア・ベトナムをおよそ4200キロにわたって流れ、南シナ海に抜ける。典型的な国際河川の一つで、数多くの支流がある。」(ウイキペディア)その上流部分は中国領内にあり、中国はここで多くのダムを建設しているため、メコン川は深刻な汚染と生態系の破壊にさらされています。ただ、この映画で問題となっているのは、このことではなく、黄金の三角地帯(トライアングル)の問題です。


 黄金の三角地帯とは、タイ、ミャンマー、ラオスの3国がメコン川で接する山岳地帯で、かつてここは世界最大の麻薬密造地帯でした。今日では、経済発展や取締り強化により減少傾向にあるそうですが、それでもアフガニスタン・パキスタン・イラン国境付近の「黄金の三日月地帯」と並ぶ密造地帯だそうです。黄金の三角地帯で初めて麻薬の密造を大規模に行うようになったのは、実は中国人でした。第二次世界大戦後、中国では国民党と共産党との内戦が行われ、1949年に敗北した国民党は台湾に逃れますが、同じく国民党の残党の一部が南下して三角地帯を占領し、そこで現地人を使って麻薬を密造し、世界中に麻薬を密売して国民党の資金源としました。台湾がこの地方から手を引いた後も、この地方では中国系やミャンマー系などの軍閥が活動し、この地方は国家権力の入り込めない半ば無法地帯となっていました。
事件は、こうしたことを背景として起きます。2011105日、この地域のメコン川を航行中の中国船が何者かに襲われ、乗組員13名全員が惨殺されました。メコン川は中国を含む周辺国にとって交易の大動脈ですので、このようなことは容認できません。中国はカンボジアやタイとも協力して特殊部隊を潜入させ、20127月に主犯格を含む6人を逮捕、11月にその内の4人を処刑して、事件は終わります。
映画では、密林に潜入した特殊部隊が主犯格を逮捕し、連れ出す過程が描かれ、全編アクション場面の連続です。私はアクション場面にはあまり興味はありませんが、いくつか興味ある場面がありました。一つはメコン川上流の壮大な密林地帯が何度も映し出されたことです。実際にメコン川上流で撮影されたかどうかは知りませんが、この地域はメコン川の本流に多くの支流が流れ込んで水郷地帯を形成しており、きっとこんな風景なのでしょう。もう一つは、麻薬密造地域の現場です。密造を拒否した住民は罰として手足を切り落とされ、さらに麻薬を与えられた子供は、陶酔状態で人を射殺し、自らの頭に銃口を向けて引き金を引いたりします。このようなことが実際に行われていたのかどうかは分かりませんが、まったく法が及ばない犯罪者集団に支配された地域ですから、こうしたことがあっても不思議ではないでしょう。

映画では、中国の特殊部隊は6人が首謀者を連れ出し、中国の治安当局の実力を示しましたが、この地域にはやがて新しいボスが入り込み、結局この地域の実情は何も変わりませんでした。

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