2010年に韓国で制作されたサスペンス映画で、原題は「黄海」です。この映画は歴史を扱っているわけではありませんが、朝鮮族の問題を扱っているので、ここではその点だけに触れておきたいと思います。
朝鮮族とは何か、朝鮮民族とは何が違うのでしょうか。朝鮮民族とは、朝鮮半島に住み、朝鮮語を共有する人たちですが、朝鮮族というのは、中国に56ある少数民族の一つ中で、彼らは中国語と朝鮮語を話すバイリンガルが多いようです。彼らは主に東北部(吉林省、遼寧省、黒竜江省)に多く住み、なかでもこの映画の舞台になった吉林省の延辺(えんぺん)朝鮮族自治州には80万人の朝鮮族が住んでいるそうです。
ではなぜこの地域に朝鮮族が住んでいるのでしょうか。もともとこの地方は朝鮮民族の発祥地だったこともありますが、そこまで遡る必要はありません。まず清朝の時代に、この地域は満州人の聖地として移住が禁止されていたため、この地域は人口密度が希薄で、朝鮮民族が非合法に移住していました。そして決定的だったのは、20世紀に入って朝鮮が日本の支配下に入り、さらに日本が満州に進出すると、日本の移民政策もあって、朝鮮から多くの人々が移住しました。これが現在の朝鮮族の直接的なルーツです。
なぜか韓国人は朝鮮族を軽蔑する傾向があるようで、この映画でも、延辺が貧困と無秩序の地域として描かれていますが、延辺は木材資源や鉱物資源が豊富で、さらに韓国企業も投資していますので、決して貧困で無秩序な社会ではなく、教育水準も高い地域です。ただ、この地域から韓国に出稼ぎに来ている人も多いため、そうしたイメージが形成されたのかもしれません。
映画では、主人公が借金返済のため殺人を依頼されて、韓国に行きます。まず列車で大連まで行き、そこから船で黄海を渡って韓国に行きます。韓国で色々あって彼は重傷を負い、漁船で黄海を渡って大連に向かいますが、途中で死亡します。黄海には黄河が流れ込んで一部が茶色く濁っているため黄海と呼ばれますが、この映画で何か特別な意味があるのかどうか分かりません。ただ、朝鮮族が黄海を通って韓国に行くのは最も通常のルートのようで、主人公は黄海を通って韓国に行き、そして帰りに黄海上で死亡しました。
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