2018年10月2日火曜日

小説(9) 恋文(麻実)


 あなたに一方的な恋情を抱いているのです。自分でも説明のつかぬ情熱に焦がされて。それもこの身が焼き裂かれてしまうほどの激さで。幾度となく想いのたけを想いのまま零したような恋文を脈略もなくしたためています。それは私の心の奥深くしまわれたままでいるのに耐えきれない、とでも言いたげに、私の思考を伝い、指を伝い、あなたに会いたがっています。想いは紙の上を優雅に舞っています。私はそれを毎日眺め、指でなぞり、その恋慕の羅列に恍惚としています。言葉。ことば。私のすべて。
 このおもいはなたに届いていますか?  私には確かめるすべがありません。そしてあなたが誰なのかも、知ることはできない















(この写真と本文の内容とは関係ありません。)

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