2018年7月28日土曜日

インド映画「ラガーン」を観て

2001年にインドで制作された映画で、224分という大作です。映画の舞台は、イギリスの植民地支配下にある19世紀末のインド、その中央部にある貧しい村で、映画ではインドで最も話者の多いヒンディー語が使用されています。映画は深刻な内容を扱っていますが、全体にコミカルに描かれ、インド映画では「お約束」の歌もダンスもふんだんに盛り込まれた映画です。
当時のインドでは、各地に藩王と呼ばれる地方勢力が民衆を直接支配し、イギリスは軍事力で藩王を支配することで間接的に民衆を支配し、徴税を行っていました。この地方では、前年から日照りが続き、前年は年貢を半分にしてもらったのですが、この地区を管轄するイギリス軍のラッセル大尉が、今年は年貢を二倍にすると言い出したのです。しかし今年もすでに雨季に入っているのに、雨はまったく降らず、年貢を納めること自体が困難な状況でした。そこで村人たちは藩王とラッセル大尉に陳情に行きますが、藩王は無力であり、大尉は非道でした。彼は年貢を三倍にすると宣言し、条件を出しました。村人がイギリス人とのクリケットの試合に勝てば、三年間年貢を免除するというのです。


クリケットはイギリスの伝統的なスポーツで、イギリスの海外進出とともに世界中に広まり、今日ではラグビー、サッカーに次いで人気のあるスポーツです。しかしクリケットは日本では馴染みが薄く、私もこの競技のルールをまったく知りません。ここでは、バットでボールを打つという点で、野球に似たスポーツとだけ述べておきます。そして、このゲームを押し付けられたた村人たちも、このゲームのルールを誰も知りませんでした。
大尉の要求は残酷でした。年貢を三倍払うか、ゲームを行うかでした。しかもゲームに負ければ、この村だけでなく、藩王の支配下にある村すべての年貢が三倍なります。まるで猫が鼠をいたぶるかのようです。これに対して、ブバンという青年が、村人の反対を押し切って受け入れを主張します。結局三か月後に試合を行うことになり、ブバンは少しずつ仲間を集めますが、問題はクリケットのルールを誰も知らないことです。
ところが、たまたまインドを訪れていた大尉の妹エリザベスが、兄のやり方が不公平だとして、ブバンたちにクリケットを教えることになりました。メンバーには、ヒンドゥー教徒、シク教徒、イスラーム教徒がおり、さらに不可触民まで参加しています。まさに宗教と身分の違いを超えたチームです。彼らの願いは、もちろん年貢の免除でしたが、同時に非道なイギリス人に対するインド民衆のプライドを示すことでした。
クリケットの試合の時間は方式によって異なるようですが、最大で五日間というケースがあるようです。今回の試合では三日間ということになっており、映画ではこの三日間の試合を1時間かけて映しています。藩王国の各地の村から人々が応援に集まり、大歓声の中で試合が始まります。何度も絶望的な状況に立たされますが、奇跡的にそれらを乗り越え、最終的に村人チームが勝利し、その直後に待望の雨が降り始め、人々が歓喜して映画は終わります。
 最初から結末が分かっているような映画ですが、非道なイギリスに対して、インドの民衆は血を流さず、クリケットというスポーツを通して自分たちの誇りを守ったという映画で、非常によくできており、また楽しい映画でした。なお、今日クリケットはインドの国民的なスポーツだそうです。

0 件のコメント:

コメントを投稿