豊田武著、2012年、吉岡弘文館
苗字は、本来名字といい、日本では10万を超える名字=苗字があるそうです。苗字の発展は複雑な過程をたどりますが、基本的には血縁の繋がりを示すものとして発展し、この点で世界の他の地域でも、似たようなものです。したがって、根が地中にはるイメージから、苗字という言葉が用いられるようになったようです。日本における苗字の変遷の歴史は、日本の各時代の社会を反映しており、日本史の通史を勉強しているようでした。苗字の発展に大きな役割を果たしたのは武士で、彼らは地名を苗字にすることが多く、そのため名字の数が一気に増えたそうです。
明治維新後、戸籍法が制定されて庶民も苗字を持つことが求められたため、人々は寺に駆け込んで住職に苗字をつけてもらったりしたそうです。次に妻の問題があります。儒教では、祖先からの血の繋がりが重視されるため、女性が他家に嫁いだ場合でも、実家の苗字を名乗ります。しかし、戸籍法では、結婚した女性は夫の姓に変更することを求められます。これには家父長的な家族制度の強化という目的があったと思われます。ただし、中国では、夫婦は別姓のままです。
本書は、苗字の問題をかなり体系的に述べており、大変興味深く読むことができました。
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