2018年3月21日水曜日

「客家パワー」を読んで


松本一男著 1995年 サイマル出版会
 客家については、過去に何冊かの本を読みました。中国の長い歴史の中で、華北が混乱すると、人々は安全を求めて南に移動します。中国の歴史上5回、大規模に南部に移動しているとのことです。彼らは南部ではよそ者なので、南部の社会に溶け込めず、孤立した聚落を形成してきました。彼らは周囲から孤立して暮らしていたため、彼らが華北で使用していた言語や風俗が残っていることが多く、これは民俗学的に大変興味深いケースです。また、華北では北方から侵入した異民族との混血が繰り返されますが、客家は彼らが華北を離れた時代の種族の特徴を残していることが多く、大変興味深い研究対象となっています。
 ただ、客家は民俗学的な研究対象というだけでなく、現実に活躍している人々でもあります。近代史において活躍した客家は、太平天国の乱を率いた洪秀全、孫文・蒋介石などに嫁いだ宋家の三姉妹、鄧小平、シンガポールを近代国家に仕立てたリー・クアンユー(李光耀)、台湾の総統李登輝など、枚挙にいとまがありません。本書は、客家の民俗学的探究より、中国国内や世界に散って活躍した客家を描いています。一般に華僑と呼ばれている人々の多くは客家だそうです。彼らは、華北を追われて南部に移住し、さらにそこを追われて東南アジアや台湾に移住し、それらの地域に大きな足跡を残しました。
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