魯迅に関する本を三冊読みました。魯迅については日本でも大変よく知られています。日本に留学し、仙台医科大学で学んだこと、白話文学を実践し、「狂人日記」「阿Q正伝」を著し、中国の伝統思想である儒学を痛烈に批判したことなどです。
今村与志雄著 1990年 第三文明者
本書は簡単な伝記と、いくつかの評論からなっています。「狂人日記」「阿Q正伝」については、私もはるか昔に読んだことがあり、前者については白話文学としては十分こなされておらず、後者は小説芸術としてはそれほど高いものではないそうです。それにもかかわらず、「阿Q正伝」が中国古典文学となった所以は、人間の醜悪の権化というべきタイプを創造した作者の悲劇精神が作品を通じて読者に感銘を与えるからだそうです。
なお、魯迅は日本に7年滞在しており、日本語も堪能ですが、日本文学にはあまり関心がなかったようです。ただ、夏目漱石の作品には熱中し、新刊が出版されると必ず買ってんでいたようです。夏目の文学が魯迅にどの程度の影響を与えたのかについてはよく分かりませんが、確かに夏目の「嘲笑風刺の軽妙な筆致」は、魯迅の文章と似ているような気はします。
竹中憲一著 1985年 不二出版
魯迅は、1909年に帰国し、1911年に辛亥革命が起きると、彼は新政府の教育部の事務官となり、北京に移り住みます。その後軍閥政府が成立するようになると、多くの革命家は政府から去っていきますが、魯迅はそのまま軍閥政府の官僚として残り、隠遁生活者のように文献研究に励みます。そしてこの時期が、魯迅にとって最も多作な時代でした。しかし国民党による弾圧が強まると、1927年魯迅は上海に移ります。その後彼は評論活動に励み、国民党政府によって彼の著作はしばしば発禁処分とされますが、上海では優雅な生活を送り、1936年に喘息の発作で死亡します。
本書は、おそらく魯迅の人生で最も実り豊かだった北京での生活を丹念に描き出し、それなりに興味深い内容でした。
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