ニム・ウェールズ(ヘレン・フォスター・スノウ)著、1984年 春名徹・入江曜子訳
岩波書店(1991年)
著者は、「中国の赤い星」で知られるエドガー・スノーの夫人(1932~49)だった人物で、夫とともに中国で取材活動を行うとともに、著述活動にも励みます。本書は、1931年に中国に訪れ、1940年、太平洋戦争が始まる直前に帰国するまでの、中国での彼女の生活を描いたものです。彼女が中国に滞在していたのとほぼ同じ時代に、パール・バック(映画「大地」を観て http://sekaisi-syoyou.blogspot.jp/2015/07/blog-post_1.html)やスメドレーが(「偉大なる道 上下」を読んで」http://sekaisi-syoyou.blogspot.jp/2016/04/blog-post_20.html)が活躍していました。
彼女が中国についたのは彼女が23歳の時で、翌年にはエドガー・スノーと結婚しますので、ジャーナリストとしての修行はまだ始まったばかりです。この時代の中国は日本の満州侵略と国民党と共産党との対立の時代でしたが、当初彼女は中国についての理解も浅く、女性らしい視点で彼女の周囲に起こっていることを描いていました。しかし夫が共産党の拠点である延安で取材し、「中国の赤い星」の執筆を始めると、彼女も全面的に協力し、本書でもその過程が描かれています。また当時知り合った朝鮮人革命家キム・サンの生涯を描いた「アリランの歌」も執筆し、彼女もまたジャーナリスト・作家としての地位を築いていきます。それとともに、彼女は反ファシズムの学生運動にものめり込んでいきます。
結局、彼女は失意のうちに中国を離れ、夫との共通の接点だった中国を失ったとき、夫との関係も破綻し、1949年に離婚します。その後彼女は、文化大革命後の中国を何度も訪れ、多くの人々と交流し、77歳の時に青春時代の思い出として本書を出版しました。
なお、エドガー・スノーの処女作「極東戦線」が私の書棚に紛れ込んでいました。本書を買ったことをすっかり忘れていました。本書は日本の満州侵略を描いたルポルタージュで、内容的には今日ではよく知られていることですが、文章にはさすがに迫力があります。
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