2017年8月5日土曜日

映画「山猫」を観て

1963年のイタリア フランスによる合作映画で、160分を超える長編ですが、イタリア語版は200分を超えるそうです。舞台となっているのはイタリアのシチリアで、時代は前に観た「映画「副王家の一族」を観て」(http://sekaisi-syoyou.blogspot.jp/2016/05/blog-post.html)とほぼ同じで、19世紀の後半です。
 当時、シチリアはスペイン-ブルボン家の支配下にあり、シチリアの人々にはブルボン家の圧政に対する不満が高まっていました。一方、この時代は、世界史的に国民国家が形成されていく時代で、ドイツやイタリアの統一運動、アメリカの南北戦争、日本の明治維新などは、そうした脈絡の中で捉えられます。こうした中で1859年、サルデーニャ王国を中心としてイタリア統一戦争が始まり、ガリバルディという人物が千人の義勇兵を率いてシチリアに上陸します。そして映画は、ここから始まります。
 ガリバルディは、それまでにも多くの戦いに参加し、イタリアでも民族的な英雄となっており、シチリアの反乱軍がガリバルディ軍の上陸を助けます。その結果、ブルボン家の軍隊はあっけなく敗北し、映画でも戦いの場面が描かれますが、映画では、ガリバルディは一切登場しません。ただ、シチリアの乾燥した荒涼たる風景が、しばしば映し出されます。
 映画の主人公は、サリーナ公爵という大貴族で、彼は時代の変化をよく認識していましたが、そのような変化を受け入れることに抵抗を感じていました。逆に、彼の甥タンクレディーはガリバルディの軍に参加し、新しい時代の到来に希望を抱き、平民の大金持ちの娘と婚約し、新しい時代に対応して出世することを夢見ていました。サリーナ公爵は、こうした生き方を決して否定はしませんでしたが、自らは古い社会の中で生きていこうと決意します。山猫はサリーナ家の家紋であり、犬や羊は人に従順に従いますが、山猫や獅子は決して人になつかないし、決して自分の場所を離れることはありません。
 映画の最後に盛大なダンス・パーティの場面が映し出され、年老いたサリーナ公爵はタンクレディーの若い許婚者と見事なワルツを踊り、映画は終わります。それは、滅びゆく貴族階級への鎮魂歌というべき映画でした。


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