2010年のポルトガル・フランス合作映画です。
この映画は267分もの長編で、前に観た「ルートヴィヒ」(映画「ルートヴィヒ」を観て http://sekaisi-syoyou.blogspot.jp/2016/02/blog-post_27.html)の237分より長い映画です、さすがに一度観ただけではこなし切れず、二度観ることになりました。この映画は、ポルトガルの高名な作家の自伝的小説に基づいて制作されたそうです。映画の冒頭で、「これは愛情と希望を込めた物語ではない。フィクションでもなく、苦悩の日記である」と述べられています。
映画の舞台は19前半のポルトガルです。この時代のポルトガルは、ナポレオンの侵略、ブラジルの独立、保守派と自由主義者の戦いなど、ポルトガルが衰退に向かっていくさまざまな事件が起きますが、この映画では歴史は関係ありません。場所も、リスボンから始まって、イタリア・フランスを経て、またリスボンに戻ってきます。
主人公は、一応ジョアン(のちのペドロ)という14歳の孤児で、ディニス神父が保護者となっています。二人とも謎に包まれた人物ですが、やがてジョアンの母がサンタ・バルバラ伯爵夫人アンジェラであることが分かり、彼女が親に命じられた結婚をする前に産んだ子です。実は、アンジェラの父は生まれたばかりのジョアンを殺そうとするのですが、たまたま当時無頼の生活をしていたディニス神父と、当時殺し屋だったアルベルト・デ・マガリャンエスによって助けられます。二人のうち一人は神父となり、もう一人は大金持ちとなり、二人とも、後にジョアンに深く関わることになります。その後サンタ・バルバラ伯爵が死ぬと、アンジェラは生きることに絶望して修道院に隠遁しますが、理由ははっきりしません。
ここで第一部が終わり、第二部ではディニス神父の生い立ちが語られます。50年以上前、放蕩三昧の暮らしをしてきた若い貴族が、伯爵夫人に真の恋をし、伯爵夫人は男子を出産した後に死亡し、若い貴族は子供を友人に委ねて修道院に隠遁します。この子が、後のディニス神父でする。ディニスはフランス貴族の養子として育てられ、やがて実子の弟とブランシュという女性をめぐって争い、弟は卑劣な手段を用いてブランシュと結婚し、失意のディニスは各地を放浪し、ポルトガルで神父となります。ブランシュは双子を産んだ後に死亡し、双子の姉エリーゼは美しいけれども傲慢な女性として育ちます。彼女は、かつて彼女を侮辱したことのあるアルベルトへの復讐に執念を燃やしますが、アルベルトは相手にしません。ところが、パリに留学していたジョアンがこの年上の女性エリーゼに熱愛し、彼女の依頼でアルベルトを殺すためポルトガルに戻ります。ここで、ジョアンの誕生の秘密に関わるディニスとアルベルトが繋がります。
結局アルベルトの殺害に失敗したジョアンは放浪の旅に出、疲れ果てての死の床につきます。そしてその瞬間、彼は14歳のジョアンにもどり、死の床の周りを彼に関わった人々が通り過ぎ、彼は死んでいきます。つまり、今までの物語は、すべて幻想だったのでしょうか。全編を通じて、幾つものミステリーが絡み合い、それぞれの人々が抱える過去、人々との関係、そうしたものを一つ一つ紡いでいき、一枚の布が完成されます。そういう意味では、前に観た映画「サン・ルイ・レイの橋」を観て http://sekaisi-syoyou.blogspot.jp/2017/02/blog-post_25.htmlに似ているように思います。いずれにせよ、この映画では、貴族同士の愛のない結婚が悲劇の原因となり、これに対して生まれた真の愛が、新たな悲劇を生み出していったようです。
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