2017年8月19日土曜日

映画「カミーユ・クローデル」を観て

1988年にフランスで製作された映画で、19世紀末期に活躍した女性彫刻家の半生を描いています。

カミーユ・クローデルは、幼いころから自分で粘土を掘り出し、いろいろな造形物を作っており、異常な才能を示していたようです。1885年、彼女は19歳の時ロダンに出会います。ロダンも彼女の才能を認め、当時彼が製作に取り掛かっていた大作「地獄門」を手伝わせるため、彼女を弟子とします。なお、この「地獄門」の一部として、日本でもよく知られている「考える人」が製作されました。いずれにせよ、カミーユは大変ロダンの役に立ち、やがて二人は愛し合います。









彼女は、二十歳代後半に妊娠し中絶するとともに、ロダンに長年連れ添った内妻がいることが判明し、二人の関係は決裂します。この作品は、内妻を連れたロダンに追いすがろうとするカミーユが描かれており、ロダンを忘れきれないカミーユの哀れな気持ちが描き出されています。一方、当時カミーユの作品はロダンの模倣として受け取られていたため、彼女は自分のアトリエで一人で創作に励むようになります。彼女はアトリエに閉じこもり、ロダンへの憎しみを増幅させ、自分の作品を破壊し始め、しだいに精神が破綻していきます。その結果、191348歳の時、家族によって精神病院に入れられ、訪れる人も少なく、1943年に家族に看取られることもなく、78歳で死亡しました。彼女の残された作品は、ロダンの意志で、彼女の死後ロダン美術館に展示されました。なお、彼女の弟は詩人であると同時に外交官で、第一次大戦後駐日大使を務めたとのことです。
 映画は、話が断片的で、ストーリーを十分読み取ることができませんでしたが、一人の天才彫刻家が心のバランスを失っていく過程は、鬼気迫るものがありました。天才として生まれたことは、彼女に不幸をもたらしたといえるかもしれません。また、女性は芸術家にはなれないと考えられていた時代でしたので、彼女の不幸は、そうした時代に先駆者として生きたことにあるのかもしれません。


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