島尾永康著、1994年、岩波書店 (1979年岩波新書版の復刻)
ニュートンについては、万有引力の法則により、今日の物理学的世界の基盤を形成した人物として、あまりにもよく知られていますが、私はニュートン自身についてはほとんど知りませんでした。この本を読んで分かったのですが、彼の生き方はあまりに俗物的で、はっきり言って彼の伝記は、あまり面白くありません。「リンゴが落ちるのを見て……」という話も、事実かどうかはっきりしません。
彼は、1642年、つまりイギリスでピューリタン革命が始まった時に生まれ、その後王政復古や名誉革命、さらにペストの流行など、かなり困難な時代に生きました。未熟児として生まれ、長生きできないと言われましたが、結局84歳まで生きました。すでに22歳の時に万有引力の法則を発見し、1687年(名誉革命の直前)に主著「プリンキピア」を刊行します。その後、下院議員、王立造幣局長、さらに1703年には王立協会会長となり、1727年に死ぬまで、この地位にいました。まさに、栄光に包まれた後半生を送ったわけですが、この間に精神を患ったり、ライバルを蹴落としたりするなど、あまり愉快な話がありません。
本書は、ニュートン自身の人生が面白くないためか、あまり面白い本とは言えませんでした。ただ、ニュートンに関わった当時一流の思想家たち、ロックやライプニッツなどとの関係は、面白く読むことができました。また、ニュートンの一生があまり面白くないからといって、彼が近代科学の発展に遺した巨大な役割が減じる分けではありません。
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