2015年7月29日水曜日

「波乱万丈のポルトガル史」を読んで

阿部眞穏(まさやす)著 泰流選書 1994
著者は、通算9年間ポルトガルの日本大使館に勤務した人物です。以前にも、大使館勤務経験者が著した本を何冊か読みましたが、一般にこうした本は、当たり障りのないことを書く傾向があり、本書にもこうした傾向はあります。ただ、ポルトガル史についての本は、非常に少なく、あまり選択の余地がありませんでした。下にあげた「ポルトガル史」(金七紀男著 彩流社 1996)は、数少ないポルトガル史の専門家によるポルトガルの通史ですが、残念ながらあまり興味をひく内容がありませんでした。ただ、私自身にほとんど知識のない中世ポルトガル史やサラザール独裁体制についての知識を補給した程度でした。
「波乱万丈のポルトガル史」は、まずタイトルに魅かれましたが、読んでみると、この程度の波乱万丈はどの国にもあることです。それでもポルトガルについての知識がほとんどない私にとっては、役に立つ内容もありました。例えば、ドーロ川の河口の両岸にローマ時代からあるポルトとカーレという二つの町を合わせて、ポルトガルとなったそうです。「なるほど」と、かなり低レベルなところで納得していました。ハンガリーの首都ブダペストが、ブダとペストという二つの町を合わせたものである、というのと同じですね。
「エピローグ」で著者は次のように述べています。「ポルトガルの歴史の特徴は、ブールドン著「ポルトガル史」が指摘するように、さまざまの歴史的事件が他の諸国より先に起き、そしてその結果が最後まで残ったことである。かつて西欧第一の先進国だったため、かえって長く後進国にとどまることになった。」

確かにポルトガルは、すでに13世紀に国家を建設し、15世紀にはいち早く海外に進出し、ポルトガル史上最も繁栄した時代を築きました。しかし、地主支配の農村社会はほとんど変わることはなく、むしろ海外からの富によってそれは温存されてきました。あの山の多い小さなポルトガルが存続できたのは、ブラジルを含む植民地からの搾取によるものです。20世紀に民主化の動きが高まりますが、政局は混乱を極め、結局サラザールの独裁体制となります。この体制は、古い農村社会を残したまま、アンゴラやモザンビークなどからの搾取によって成り立っていた体制でした。そして時代は、植民地搾取という経済構造が終わりつつある時代で、どの国も植民地を手放していった時代に、ポルトガルは悪名高い植民地戦争を繰り返し、独裁体制は破綻していきます。









































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