2018年にアメリカで制作された映画で、キリスト教の使徒の一人パウロの晩年を描いています。パウロはキリスト教の伝道に大きな役割を果たし、異邦人への伝道者と呼ばれます。映画の日本語版のサブタイトルは「愛と赦しの物語」となっていますが、英語版では「キリスト教の伝道者」となっています。なお、パウロはイエスの死後「回心」しますが、この時代のパウロについては、このブログの「映画で聖書を観る ローマ帝国に挑んだ男 -パウロ」(https://sekaisi-syoyou.blogspot.com/2014/04/blog-post_3082.html)を参照して下さい。
パウロは、30年の間に三度、大伝道旅行を行っており、それまでユダヤ教の一分派でしかなかったキリスト教を普遍宗教に高め、古代社会にキリスト教の共同体を築いたとされます。パウロはイェルサレムで逮捕されてローマに護送され、ローマで処刑されたとされます。そして映画は、ローマで獄中にあったパウロの言葉をルカが書き取るという形で進められます。「新約聖書」には7点のパウロの書簡が掲載されていますが、それ以外に、パウロの布教活動を記した「使徒公伝」があり、これがローマでのパウロが獄中で語ったものを、ルカが書き取ったとされるものとされます。ルカは、パウロのほとんどの伝道旅行に同行したとされ、パウロの思想を後世に伝える上で、極めて重要な役割を果たしました。彼はまた医者でもあったようで、後に医者の守護聖人となります。
映画は、ネロ帝によるキリスト教徒大迫害の時代の紀元67年に、ルカが賄賂を使ってパウロのいる牢獄に入り込み、パウロの言葉を筆記する場面を中心に展開され、パウロの強い意志とローマの街でのキリスト教徒の不安、さらに牢獄を管理する帝国の高官などの姿を描いており、大変興味深い内容でした。ただ、私個人としては、あまり面白い映画とは言えませんでした。なお、この年にパウロはローマで斬首されたとされており、映画でもそのように描かれていますが、パウロがローマで死んだかどうかについては、はっきり分からないようです。
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