2009年に制作されたイギリス・アイルランドによる合作映画で、1960年代後半から1998年のベルファスト合意まで断続的に発生した紛争、つまり北アイルランド紛争の一つの局面を描いています。原題は「至福の5分間」です。アイルランドそのものについては、今まで何度も述べてきたので、ここでは繰り返しません。アイルランドについては、このブログの以下の項目を参照して下さい。
映画でアイルランドの独立を観て (https://sekaisi-syoyou.blogspot.com/2019/05/blog-post_25.html)
アイルランドは長い闘争の末1922年に自治国となり、1937年に完全独立します。しかし、問題が残っていました。つまり北アイルランド問題です。クロムウェルの時代以来、北アイルランドには多くのイギリス人が移住し、自分たちの社会を築いてきました。そのためアイルランドが独立する際、彼らはプロテスタントであるため、カトリックのアイルランドに併合されることを拒否し、イギリス領としてとどまりました。そして彼らは、北アイルランドのアイルランド人つまりカトリック教徒を、政治・宗教・経済などあらゆる面で差別的に扱いました。こうしたことに対する不満がカトリック系住民の間に広がり、1960年代末ごろから警官とカトリック系住民との大規模な衝突、カトリック系、プロテスタント系双方のテロ組織によりテロの応酬が続き、北アイルランドは泥沼状態となっていきます。
映画は、プロテスタント系テロ組織に属する若者が、カトリック系の若者を殺すところから始まります。1975年、アルスター義勇軍のメンバーである17歳のアリスター・リトルは報復テロとしてカトリック教徒である19歳のジム・グリフィンを殺害します。彼は命じられるがままに、初めて拳銃を与えられ、軽い気持ちでジムを射殺しました。しかし、その現場をジムの8歳になる弟ジョーが目撃していました。その後アリスターは深い後悔の念に捉われ、苦しみ続けます。一方、事件を目撃したジョーは、兄を助けなかったことに対するいわれのない非難を受け、トラウマに苦しみ、犯人にナイフを突き刺す「至福」の時を夢見ていました。
その後色々あって、30年以上たった後に、二人はようやく過去から解放されます。アイルランドの内戦は、スペイン内戦同様、多くの人々に深い傷を残したのでした。
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