2020年4月22日水曜日

「ヨーロッパ紋切型小辞典」を読んで


パスカル・ドゥテュランス著 2008年 田中訓子訳 作晶社 2011
 「皮肉屋のフロベールは、言葉の意味を知るよりはむしろ決まりきった意味を忘れたい人のための辞書を考案した。「紋切型辞典」の中では、猫は猫ではなく、すべての語は一つの現実ではなく、一つの陳腐な考え、一つのうわさ、一つの幻想を表している。それぞれの語は新しい一つの意味を受け取る。言葉はパンドラの箱となり、そこから、あらゆる潜在的な意味が飛び立つ。それではヨーロッパは?……」
 「ヨーロッパについての概念と評価の全体的な見直しの時期がきているように思われる。というのもヨーロッパについて言われていることは、断言というよりはほとんど信仰、描写というよりは願望、既成事実というよりは固定概念の集合のようなものだからだ。……」「この小さな事典に教訓的な狙いを期待しないでほしい。ここにあるのは訂正したり非難したりするためのものではない。すべては私たちのヨーロッパ観と戯れるためのものだ。また、ここから立派な学識を得ようなどと思わないで欲しい。うまくいけば、図版の後ろに隠れているものや、言葉の下で沈黙しているものの面白さを味わってもらえるだろう。」
 以上が本書の目的です。これまでに「ヨーロッパとは何か」と繰り返し問われてきました。こうした問いがなされる場合、ギリシア神話、つまり美しい女神エウロペをゼウスが牡牛に姿を変えて略奪し、西方に連れ去ったという物語で、それは本書の表紙にも描かれています。この物語からヨーロッパ人がイメージするのは、美しい悲劇の貴婦人というものですが、それ以外にもエウロペはさまざまに解釈されてきました。このように、本書はヨーロッパについてのさまざまなイメージに語っていますが、こうした思考方法になれない私には、かなり難解な本でした。そして結局、「ヨーロッパとは文化である」という紋切型の結論で終わりますので、少しがっかりしました。

 なお、表紙の絵は1919年に描かれたものですが、この絵に描かれた勝ち誇った牡牛は、私にはアメリカ合衆国のように見えます。

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