レジーヌ・ペルヌー/ジョルジュ・ペルヌー著 福本秀子訳 白水Uブックス 2010年
フランスへの日本人旅行客を対象に、フランス中世史ゆかりの土地を、歴史的な説明をしつつ案内しようというもので、実際に行ったツァーの記録です。本書は決して難しいことを語ろうとしているわけではありませんが、それでも中世史についてのかなりの予備知識とフランスの地名について知っていないと、話についていけないような気がします。ただ、旅行者は難しく考えず、すなおに話を受け入れればよいのかも知れません。
中世を通じてフランスとイギリスの対立のもととなったノルマンディーにはじまり、ノルマンディーから追放された修道士たちがクリュニー修道院をはじめとする修道院の繁栄を生み出したブルゴーニュ、カペー家の発祥地イール・ド・フランスについて語られます。さらにスペインへの巡礼の通路オーヴェルニュ、ロマンスの花開くアキテーヌ、南フランスのラングドッグについて語られます。また、神聖ローマ皇帝と境を接するシャンパーニュ、イタリアに近く、教皇領アヴィニョンのあるプロヴァンスについても語られます。
中世においては、フランスはまだ国家とはいえない状態でしたし、これらの地域の多くではフランス語さえ話されていませんでした。そうした時代に、これの地域は独自の文化を発展させ、多様なフランス文化を生み出していったのです。
解説によれば、著者のリジーヌ・ペルヌーは、フランスを代表する中世史家の一人で、1998年に88歳で死亡しました。絶筆「中世の女性のイメージ」を完成してまもなく、彼女は、「あちらの世界の人々に会いに行く。ジャンヌ・ダルクにも」といって昏睡状態に陥ったそうです。
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