1995年にアメリカで制作された映画で、原題は「ソロモンとシバの女王」で、邦題の「エジプトの女王」は直補説関係がありません。「ソロモンとシバの女王」については、「映画で聖書を観る ソロモンとシバの女王(1959年)」(http://sekaisi-syoyou.blogspot.jp/2014/04/blog-post_3082.html)を参照して下さい。
シバの女王については、旧約聖書に次のような記述があります。「シバの女王はソロモン王の知恵の噂を伝え聞くと、多くの随員を伴って、香料、大量の金、宝石などの贈り物をラクダで運び、難問を以って彼を試そうとエルサレムを訪問した。女王はソロモン王に数々の質問を浴びせるが、王に答えられないことは何も無かった。また、王の宮殿、食卓の料理、居並ぶ臣下、神殿の燔祭などの様子を目の当たりにした女王は感嘆し、ソロモンが仕える神を称え、金200キカル(1キカルは約34.2kgなので6.84t)と非常に多くの香料や宝石を贈った。ソロモン王も女王に対して贈り物をしたほか、彼女の望むものを与えた。こうして女王一行は故国に帰還した。」(ウイキペディア参照)ここで述べられるシバとはどこの国かはっきりしません。今日ではイエメンかエチオピアであろうと推測されています。また、シバの女王の名前も分かりません。いくつかの仮説がありますが、映画ではニカウレーという名前が用いられており、これはエチオピアの女王として仮定されている名前のようです。いずれにせよ、聖書の僅かな記述から、ソロモンとシバの女王の恋を中心に、さまざまな物語が創作されてきました。
シバの女王がソロモン王を訪問したのは、乳香の貿易について話し合うことだったようです。乳香は非常に高価な香料で、エジプトではミイラの防腐剤として大量に使用され、さらにはるか中国や日本にまでもたらされました。乳香の産地であるエチオピアやイエメン方面は、その貿易によって非常に栄えていました。一方、ソロモン王は征服戦争や神殿の建設などで財政難に陥っていたため、シバの国を服属させて乳香貿易を独占しようと考えていました。小国シバは大国ヘブライ王国の軍事力には太刀打ちできませんので、シバの女王が多くの贈り物を携えてソロモン王を訪問したという分けです。なお、乳香については、このブログの「グローバル・ヒストリー 第7章 第7章 南アジアと海域世界 3.海域の形成」(http://sekaisi-syoyou.blogspot.jp/2014/01/7.html)を参照して下さい。
1959年版の「ソロモンとシバの女王」では、シバの女王をはじめとする出演者のほとんどが白人でしたが、この映画でシバの女王を演じた女優は、アフリカ系アメリカ人の混血だそうで、他の出演者もなんとなくセム人のような顔つきでした。アメリカが制作する映画ですので、出演者をすべて現地人にしろとは言いませんが、この映画のように、せめて主役くらいはそれらしい顔つきの俳優にすべきだと思います。まして、金髪の女優はまずいだろうと思います。
映画はソロモンとシバの女王の恋、国民の不満、ソロモンの子を身ごもったシバの女王の帰国という、お馴染みのストーリーで展開します。1995年版は、1959年版のような派手な奇跡物語は一切なく、あたかも史実であるかのように二人の関係を描いていますが、もともと「ソロモンとシバの女王」の物語は想像上の産物なので、事実であるかのように描くことは意味がないように思います。私としては、1959年版の方が面白いと思いました。
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