2017年4月19日水曜日

入試改革について思うこと

最近入試改革案がいろいろ出てきています。私自身、予備校で長く働いてきたため、共通一次試験の開始以来何度も入試改革に遭遇してきました。今回の入試改革の目玉は、従来のマークシート方式を減らして、記述式の試験を増やすのだそうです。「記述式」とは、多分受験用語なのだと思いますが、この言葉の反対語は「マーク式」です。つまり答案用紙に自ら回答を書くのか、マークシートにマークするのかということだと思いますが、この場合、記述式でも回答がすべて記号であっても「記述式」ということになるわけですから、もう少し表現方法を考える必要があります。ただ、文科省が言っている「記述式」とは、単語を直接書かせたり、文章を書かせたりする試験を想定しているようですが、もちろん解答を選択して記号を記述する問題も存在するでしょう。
 こうした形式の試験の場合、最大の問題は採点方法だろうと思います。文科省は、当面民間の業者に委託するというようなことを言っているようですが、民間の業者とは具体的にどういう業者なのでしょうか。新しく業者を組織するということでしょうか、それとも模擬試験を行っている予備校などのことなのでしょうか。もし後者であるとするなら、文科省は予備校での採点がどのように行われているのか、知っているのでしょうか。
私がいた予備校では、現役の先生や退職した先生などに採点を依頼します。こうした採点者たちが予備校に問題をとりにきて、家で採点して再び予備校に持ってきます。もしかすると家では、記号問題は奥さんが採点するなど家庭内分業が行われているかもしれません。もちろん複数の採点者が採点することはありませんので、ミスが発生する可能性は常にあります。ミスが発生したら、予備校はお客様に率直に謝罪します。一番恐ろしいのは、採点者が答案を紛失することです。私自身、電車の網棚に答案を忘れて慌てたことがあります。また、ある人はバイクの荷台に答案を縛り付けて走行していた時、紐が外れて答案をあちこちにばらまいたことがあります。もちろんこんなことが日常的に起きているわけではなく、予備校も厳重な管理を行っていますが(今は宅配郵送しているかもしれません)、それにしても国家的な規模で行われるテストが、こんなことで良いのでしょうか。なお、予備校では実行していませんが、共通テストでは複数の採点者が採点する必要があり、これを短期間で実施するには、かなり大規模な仕事となり、予備校にとってはビジネス・チャンスとなるかもしれません。
 また、記述式の問題では、多様な解答の可能性があり、予備校でも模擬試験のたびに、採点基準を巡ってかんかんがくがくの議論が行われ、さらに試験終了後、日本中から問い合わせがあります。これを国家的な規模で行うとしたら、想像するだけでも発狂しそうです。採点基準の作成に際しては、あらゆる可能性を考慮し、細心の注意を払って行われますが、それでも多くのクレームが届きます。全国共通の試験では、可能な限り客観性が求められ、そのためにはますます採点基準が詳細となります。その結果、採点者は手足をガチガチに縛られて採点することになり、「記述式」とはいえ、問題の本質は限りなくマーク式に似通ったものになっていきます。

 私が思うことは、記述式の試験では絶対的な客観性を求めず、ある程度採点者の裁量に委ねるしかない、ということです。その結果発生するであろう若干の不公平はやむを得ないことだと思います。絶対的な客観性を追求するマーク式の試験の弊害と、記述式での採点による不公平を天秤にかけた場合、なお記述式の方が優れていると思います。マーク式の場合、受験生は何が正しいかではなく、どれが答えかを追求しますので、学習態度が歪んでしまいます。記述式でも、ただ単語をかかせるだけとか、1020字程度の論述問題では、似たような弊害を生み出すでしょう。むしろ思い切った長文の論述を出題し、採点はある程度採点者(複数必要)の裁量に委ねるというのはどうでしょうか。この方法では、試験のたびに激論が起こることは明白ですが、こうした議論を通じて、より良い問題の作成と採点方式が生み出されていくのではないでしょうか。


庭のサクランボの木に花が咲きました。実がなるには、まだ2~3年かかりそうです。














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