1986年にイギリスで制作された映画で、16世紀末から17世紀初頭に活躍したイタリアの画家カラヴァッジョの生涯を描いています。ただし、カラヴァッジョの生涯を忠実に再現しているのではなく、彼を通して製作者にとっての美の世界が描かれています。
16世紀の前半に、レオナルド・ダ・ヴィンチ、ラファエロ、ミケランジェロなどの天才が活躍したため、その後はこれら三人の手法を継承するマニエリスムが流行します。もちろんマニエリスムは単なる模倣ではなく、バロックへの橋渡しの役割を果たすのですが、そうした風潮の中で一人の異彩を放つ画家が出現します。光と陰を巧みに利用し、従来のように人物を理想化せず、「決定的な瞬間を誰にも真似できないほどに鮮やかに切り取って描く優れた能力」を持ち、「人間の絶望的なまでの不安と心の弱さを表現すると同時に、人間が代々受け継いできた優しさ、謙虚さ、柔和さなどが未だ失われていないさまを描き出している」(ウイキペディア)のだそうですが、私にはよく分かりません。
カラヴァッジョは、ミラノで修行した後、ローマで才能を見出されます。当時、宗教改革と対抗宗教改革が激しく対立し、カトリックの中心であるローマでは、従来とは異なる人を引き付けるような芸術が必要とされていました。そうした時代に、彼は枢機卿や大貴族から保護を得ることができ、金銭的にはあまり苦労しませんでしたが、相当に素行が悪く、舞踏会や居酒屋で喧嘩して暴れたり、殺人まで犯し、教皇から死刑宣告を受けたことさえありました。その後、各地を転々とした後、1610年に許しが出てローマへ帰る途中、病死しました。38歳でした。死因は、絵具に含まれる鉛の中毒だそうで、画家にはこの病気が多いそうです。
映画は、そうした彼の経歴にはほとんど触れず、死の直前に過去を思い出す形で進められ、主として彼の創作活動の姿が描かれています。アトリエには、ホモセクシャルあり、バイセクシャルありで、かなり猥雑な世界として描かれていました。この映画の監督が同性愛者で、彼の嗜好がかなり強く表れているように思いました。さらに、この時代にはありえない、タイプライターや自転車、写真集まででてきますので、はっきり言って、私にはほとんど理解できない世界で、ただ、バロック絵画の初期にこういう画家がいたということを知ったのみで終わりました。
カラヴァッジョは、生存中は大変評判の高い画家でしたが、死後まもなく忘れ去られ、20世紀に再発見され、この映画で広く人々に知られるようになったそうです。
0 件のコメント:
コメントを投稿