2016年11月2日水曜日

「フランス人の昼と夜」を読んで

ピエール・ギラール著(1976) 尾崎和郎訳 誠文堂新光社(1984)
 本書は、1852年から1879年までのフランスの人々の日常生活を描いたものです。この時期は、ナポレオン3世の第二帝政の開始から第三共和政の初期の時代までで、この間にいろいろな政治的事件はあったものの、著者によれば、この期間がフランス資本主義の黄金期だそうです。
 本書が描いているのは、こうした資本主義の発展や政治的事件ではなく、この間に猛烈に発展する資本主義経済の真只中で生きた人々の日常生活です。「歴史的事実は目印以外の何ものでもない。文明とは、日々の多様性を多数な組合せのもとに織り上げていく織機にほかならない。」こうした視点から、恵まれた階級、恵まれない階級、女性、幼児、パリと地方、食物と衣服、快楽と日常生活、など多岐にわたって日常生活が淡々と描写されていきます。それぞれの内容は興味深いのですが、要するに「それが何なのか」ということには触れられませんので、幾分欲求不満となります。

 「このようなすべての矛盾こそ、衣、食、住、教育、愛、友情、憎しみ、羨望などともに、日々の生活の根幹をなすものであった。そして、この矛盾が多ければ多いほど、それだけ文明は可能性に富んでいるのである」ということです。

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