1989年に松竹が制作した映画で、1936年のニ・ニ六事件の発生から終結までの四日間を、当時のオールスターキャストで描いていますが、結論から言えばつまらない映画でした。ニ・ニ六事件に関しては、前に観た「戒厳令」(「映画でヒトラーを観て はじめに」http://sekaisi-syoyou.blogspot.jp/2014/02/blog-post_24.html)の方が、もっと問題の複雑さを描いていました。
ニ・ニ六事件の背景を一言で述べることは困難なので、ここでは触れません。ただ、国際的にも国内的にも閉塞状況が強まる中で、事件が起きたということです。さらにこれより4年前の1932年に、海軍の青年将校による犬養首相暗殺事件である五・一五事件が起きており、その犯人たちに対する処分が極めて甘いものであったことが、ニ・ニ六事件を引き起こす一因となりました。五・一五事件とニ・ニ六事件との違いは、前者が将校のみによるもので、武器も他から調達しているのに対し、後者は何も知らない下士官たちを巻き込んだクーデタだったことです。この事件は、まぎれもなく軍の不祥事でしたが、それにもかかわらず、以後政治家たちは軍を恐れて、軍部の独走をゆるすことになります。日露戦争が終わって30年以上が経っており、今や軍は政治をも左右する強大な勢力となっていました。
映画は、4日間続いた事件の経過を淡々と描いており、その意味にでは参考になりました。彼らが目指したことは、君側の奸を排除し、天皇自らによる昭和維新の断行ですが、改革の具体策については何もなく、反乱計画は周到でしたが内容がいい加減で、総理の秘書を総理と間違えて射殺します。総理の顔さえ識別できないかった分けです。また、ある死体には48発もの弾丸が撃ち込まれており、未熟そのものです。その後、政府軍に追い詰められ、何も知らない兵士の不満も高まったため、結局首謀者の多くは自殺するか、投降して処刑されました。
まるで赤穂浪士の討ち入りも観ているようで、一人一人の将校たちは純粋な思いで行動したのでしょうが、あまりにも未熟でした。人間は武器を持つとなんでもできると勘違いしてしまうようで、ニ・ニ六事件の愚かしさのみが目立った事件でした。
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