小林憲二著 ミネルヴァ書房 1995年
著者は、1990年代にアメリカ社会が大きく変質しつつあると考えます。ことの起こりは、1963年のケネディ暗殺で、犯人ついての公式発表である「オズワルド単独犯行」説を信じている人はほとんどおらず、真相の公開は2039年ということになっています。アメリカでは、公文書の公開は原則として30年後ということになっていますが、ケネディ事件に関しては、関係者が生きている可能性がほとんどない2039年まで真相を公開しないということなのでしょう。多分、私も真相を知ることができないのではないかと思われます。
そして、このことに関して最大の問題は、アメリカ国民がこれを受け入れている、ということです。「アメリカ国民はアメリカの現状に深く関わり、コミュニティとしてのアメリカはまっとうだと信じ、自分たちがバラバラで、内心そのことに深く悩んでいるという事実を認めたくなかったということこそが問われるべきなのだ。」つまり事実を隠蔽する習慣がついてしまった、ということです。そして、そのまま大義のないベトナム戦争に突入し、ますますアメリカ人は事実から目を逸らすようになります。
著者はアメリカ文学者ですので、アメリカ人のこうした心性の形成を、映画や文学を通じて語ります。私は、アメリカ文学について、まったく知識がないので、大変興味深く読むことができました。そして、現在アメリカの大統領予備選挙で起きているトランプ現象は、こうしたアメリカ人の心性を反映しているのかもしれません。
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