2016年3月2日水曜日

「絵で見るフランス革命 イメージの政治学」を読んで

多木浩二著 1989年 岩波新書
 フランス革命という激動の時代に、大物の画家だけでなく、マイナーな多くの芸術家や版画彫刻師が、この激動の時代を描いていますが、本書は、「絵という表現形式がフランス革命をどのように記述し、政治的な感受性を包み込んでいるのか」を追求しようとします。
 例えばカリカチュアは、「どんな場合にも対象を笑い飛ばすエネルギーを本質としている。威張っている対象を引きずりおろし、仮面をはいでしまうカルカチュアのグロテスクな効果は、長年の絶対主義を解体して共和政をめざす秩序の転覆にさいして、うってつけの手法であった。いうまでもないが、カリカチュアは事実を正確に記録することとは全く異なる。悪意に満ちた汚い中傷も少なくなかった」、ということです。本書では、多数の絵が用いられ、その絵が描かれた背景や、意図が解説されており、歴史を別の視点から見せてくれます。
 「フランス革命は、歴史上はじめて、政治がこれほど多くの視覚的イメージの群れを生み出した時代であった。……この激動の時代のフランス社会の政治空間には、その激動そのものを語るイメージが氾濫し、浮遊し、人々に語りかけたのである。フランス革命は、……政治が、必ずしも明示的ではないにしても、いわばその内部に自分を表現する視覚文化を産出し、享受する装置をつくりだした格別の時代だったという実感をもつようになった。」

 「視覚的イメージが盛んに用いられた理由の一つは、まだ文字を解さない人間の数が多かったこともあろう。少なくともイメージなら、一目瞭然、誰にでも理解できた。言い換えると、文化がそれ以前のように、謎めいた寓意画や大芸術のように、特定の階級の人間の知的遊戯ではなく、すでに民衆が文化享受者、ある意味では生産者としても登場するように変貌していたのである。」

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